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小「ごめん、遅なった」
俺の行きつけの焼き鳥屋は、いつの間にかAの行きつけにもなっとった。
「大丈夫、私も今きた所だよ」
小「ほんま？ならよかったわ。おっちゃん生2つ」
「私そんな飲む気分じゃないから瓶ビールにしてわけよ」
小「そ？ほんじゃそれで」
目の前に置かれた瓶ビールとグラス2つ。
俺はAのグラスに注いでから自分のグラスにも中身を注いだ。
お互いのグラスを小さく掲げて静かに口をつける。
周りがやたら盛り上がっとる。
あ、そういや今日金曜か、やから飲み誘われたんや。
あいつまだ部活受け持ってないしな。
こちとら明日も朝から部活あんねんて。
そんな事思いながら一気にビールを流し込んで、またすぐに注いで。
今度こそちゃんとシゲの事考えながら口にした。
そんなん言うても出てくるのは悪口ばっか。
何で俺を、Aを残していったんや。
そう思って、その直後にはそれがあいつの優しさなんやって思う。
わかっとんねん、わかっとっても言わずにはおれんくて。
車が飛び込んできた時、シゲは咄嗟にAの事を突き飛ばしたらしい。
でもええか？
そんなんはな、その後自分も生還してこそヒーローやねん。
そのまま自分は助からんて。
そんなん悲劇やんか、そんなんお前が好きなやつ、ちゃうやんか。
小「...シゲに会うてきたん？」
返事はわかりきっとるけど、俺は毎度そう聞いてまう。
「うん、小瀧は？」
小「俺都合つかんくて今度濱ちゃんと行く予定」
「濱田先輩元気？」
小「めっちゃ元気やで、息子と初めて釣り行ったーいうて。見てやこのダラしない顔(笑)」
高校のメンバーとは今でも回数こそ減ったけど、連絡は取り合っとって。
濱ちゃんなんかは特に。
今でも頻繁に会って飯食ったり酒飲んだりしとる。
濱ちゃんが今では二児の父ってほんま信じられへん。
やけど実際会うたらしっかり父親の顔しとるから、俺は嫌でも時間の流れを感じてまう。
小「10年かぁ...長いようであっという間やったなぁ」
「本当だね」
Aがちびちびとビールを口に含んで。
視線は前を向いとるのにどこか遠くを見てるから、遠い昔を思い出してるんやろう。
きっとAにとっても、宇宙一幸せやったあの日々。
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作者名：のら
| 作成日時：2020年9月8日 12時
