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「え、いつから？学校は？」
小「終業式の時に合わせて離任式もしてん」
「知らなかった」
小「言うてなかったもん」
「なんで、」
小「そう言う顔されたら決意が揺らぐからや(笑)」
なぁ、そんな顔すんなって。
Aはもう大丈夫や、ずっとええ顔するようになったやんか。
その理由が俺やないっていうのはちょっとだけ、残念やけど。
小「8月頭には向こう行く」
桐『なぁ望、俺のおる学校来る気ないか？』
大学の先輩の照史がそう声をかけてくれたのは、俺が唯一シゲ達の事を相談したからやと思う。
1人では抱えきれんくて、でも大切過ぎてネタにされんのも上っ面の同情も嫌で誰にも言えんくて。
そんな時照史は静かに話を聞いて、俺も会うてみたかったなぁって静かに言うた。
そっからずっと、遠く離れた所から俺を気にしてちょいちょい連絡をくれとった頼れる先輩。
「沖縄って...遠い」
小「しかも本島やなくて離島やからな、なかなか時間かかるで(笑)」
距離を思い浮かべようとしてんのかAが空を見上げて、俺も同じように空を見た。
「...小瀧、ありがとう」
小「何やねん急に」
「ずっと、側にいてくれて、ありがとう」
小「俺がおりたくて、おったんや。
...ずっと、好きやったから」
「...ん、あり、がとう」
風が吹き抜ける、木がさわさわ揺れる。
優しくて、気持ちがええ。
シゲ、ここほんまにええ所やな。
カランって音を立てたのはさっき俺が置いた缶ビールやった。
風で倒れたそれは中身を零して地面を濡らす。
「うわっ」
小「風そない強ないと思ってんけどな」
慌てて缶を持ち上げて、Aはビールを流すように水をかける。
「お前らようそんなん飲むなぁ、くっそ不味いんやけど！」
俺らは顔をあげんでもその声の主が誰かわかった。
小「...ほんま変わらへんな」
重「小瀧はやっと顔に年齢追いついてきたやん」
小「はぁ！？」
重「A」
「うん？」
重「はよ俺の寄越せ」
「これ？」
そう言うてAは鞄から取り出したレモンソーダを墓の前に置いた。
重「それやそれ！
なぁ、お前らええ感じやで。
ええ感じの大人になっとるやん」
「何、それ」
重「人生楽しめよ」
シゲが言う人生の言葉の重みを俺らは静かに受け止めた。
そんな俺らを見てシゲが多過ぎる白い歯を見せて笑う。
重「じゃあな」
もう一度強く風が吹き抜けて。
その勢いの良さに零れそうになった涙は乾いとった。
今度は倒れる事なく置かれたままのレモンソーダを見て、あいつ我が儘やなって俺が言うたら本当にってAが笑った。
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作者名：のら
| 作成日時：2020年9月8日 12時
