夏にとける side N.K (ページ20)

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小『ごめん新入生の受け入れ準備で忙しい』

小『部活終わんの遅いから、平日は難しいねん』

小『日曜は休みやけど、疲れとるからゆっくり休みたいんよ』

そんな風に言い続けたら来なくなったAからのメッセージ。

校門のすぐ横に生えとる桜の木にはピンクの花の面影も無いくらい葉が茂っとる。
衣替えも済んだ6月下旬、袖を通したばかりの夏服はまだ新入生には馴染みきってないように思う。

生1「小瀧先生、さようなら！」

小「おう、気ぃつけて帰れよ」

サッカー部なんてチャラついたイメージ持たれがちやけど、うちんとこの部員は可愛いもんやと思う。

きっちり頭を下げて校門を出て行く部員を見送って雑務済ませてから俺も帰路に立つ。

期末テストを控えて部活動が休みになるこの時期は、生徒が帰るのがいつもより幾らか早い。

『お疲れ様。
来月どうしようか、忙しかったら無理しないで大丈夫だからね』

もう1年も経つんかって驚いた。
仕事に没頭すれば時間が過ぎるのなんてあっという間過ぎて。

小『シゲの命日は残らんと帰れるから大丈夫』

そうやって送った直後、既読の表示が現れたらスマホが震えた。

小「...どないしたん？」

『どないしたんじゃないでしょ』

小「何が」

『小瀧、命日なんて言い方した事ない』

バレた。
嫌味を込めてわざと使った命日って言葉。

『ねぇ、小瀧は本当に忙しいと思うよ。
教職で、それに顧問までやってて、部員さん頑張ってるって言ってたし。
だからそんな時に無理してご飯に行こうなんて思わない』

小「...」

『だけど私に何か思う事があって避けてるなら、その理由は知りたい。
このまま関係を終わらせたくない、小瀧は私にとってそれくらい大切な存在だよ』

なんやねん、それ。
何でそんな事言うん？

お前そんなん今まで俺に言うた事ないやん。
てかそんなん言うたら彼氏怒るんちゃうの？

聞こえてる？って問いかけに、今すぐきてって俺が言うたらAはわかったって。
どこに行けばいいって聞いてきた。