夏にとける side N.K (ページ19)

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、ページ19

小「濱ちゃーん」

濱「Foooo！」

小「何やそれ(笑)」

濱「子供英語教室通わせてんねんけど、俺も勉強してんねん！」

小「その成果がそれなら才能ないで、諦め(笑)」

3年生が巣立った校舎は少し静かで、がらんとして。
何が新しくなる訳でもないのに、どこか一新されたような空気になる。

小『なんかドライブしたい気分やわ』

濱『おっしゃ！今日仕事後迎え行ったる』

軽いノリで送ったメッセージに濱ちゃんはもっと軽いノリで返事を寄越した。

慣れた運転で高速を走る。

濱「望も今免許あんねんな」

小「ん、ゴールドやで」

濱「ほんまもう、よう免許取ろう思たなぁ」

シゲの事故があって、俺は絶対免許はとらんと決めてた時期があった。
自分が死ぬ事が怖いんやなくて、誰かの命を奪う可能性が怖くて。

小「部員が怪我した時にさ、自分がすぐ車出せんのが情けなくて」

濱「ええ先生やわ」

小「最初から持っとけって話やけどな」

別に強制ちゃうしええやんかって濱ちゃんはアクセル踏みながら何でもないように言うて。
俺は濱ちゃんのそういう優しさがめっちゃ大好き。

濱「あ、そう言えばAちゃん」

小「あー、濱ちゃん初詣で会うてんな？
何で言うてくれへんの！」

濱「わざわざメッセージする程の事でもないし、会うた時の話題にしようと思ってーん」

元気そうで安心したわって言う顔がほんまにほっとしとる。

濱「俺なんてそんな関わりなかったけど、まぁシゲ繋がりってだけやったし。
そんでもほんまに気にしとってん、ちゃんと次に進めるんかなって」

小「次？」

濱「うん、高校生が経験するにはあまりに酷な事やったやんか。
ちゃんと次、誰かを好きになれるんかなって。
余計なお世話やけどさ、人を好きになる事に臆病になってもおかしくないやんか」

濱ちゃん言うてる事がわかるけど、わかるけど、わからへん。
何で次に進めたって言うん？
そんなまるで、Aに彼氏でもできたみたいに。

濱「カッコええ子と2人でおったんやけどさ。Aちゃんなんていうんかな...優し顔しとったわ」

俺、濱ちゃんのそういう所は大嫌いや。
やって神ちゃんやったら気を使ってそんなん絶対俺に言わへん。
濱ちゃんの糞アホ鈍感野郎。

小「濱ちゃんて、自分じゃ意味わからん事で奥さんにキレられる事ようある？」

濱「へ、何でわかんの！？」

小「奥さんの気持ち嫌ってほどわかるわ...」

濱「何！？何で！？え、Aちゃんと喧嘩中とか？」

大人なんやから早よ仲直りせなあかんでって言う濱ちゃんに、俺は深い溜息を返す事しかできへんかった。