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校内に広がる、文化祭とはまた違う浮き足立つような空気感。
卒業式をすぐそこに控えた2月下旬、まだ突き刺さるような風は冷たい。
それでもすっきりと乾いた空気は自然と生徒の背中を押して、次の一歩を踏み出す準備をさせていく。
生1「のんちゃん先生!」
小「小瀧先生や言うてるやろー」
放課後いつもは誰かしらと一緒に帰っとる生徒が1人、廊下をかけてやってきた。
生1「廊下走るのは怒らないんだ?」
小「もう最後やし好きに走っとけ。
でも目上の人には敬語使えるようになりなさい」
生1「ふふふ、はーい!
...ね、ちょっとだけお話ししてもいいですか?」
この空気で彼女が何を言いたいのかもうわかってまう。
毎年経験してるって言うたら、図に乗るなってAは言うんやろうか。
生1「先生、ずっと好きでした」
小「うん」
生1「卒業したら先生の彼女にして下さい」
顔を赤らめて、俯きがちに返事を待つ姿が可愛くないって言うたら嘘になる。
勇気を出して想いを伝える姿なんていうのは、きっと誰やって可愛いしカッコええ。
小「ごめんなさい」
やから俺は、誠心誠意応えるようにしとる。
生1「私が子供だからですかっ...?」
小「ううん、そんなんちゃうねん」
生1「じゃあ」
小「俺ずっと片想いしてる人おんねん。他の人見た事もあるけど、上手くいかんくて。やからってこの片想いも上手くいくとは到底思えないんやけど」
生1「...そんなにずっと好きなんですか?」
小「10年以上の片思いよ。アホみたいやろ?」
素直に伝えれば、驚いた顔して俺を見る。
この歳の男がそんな恋愛しとるとは、そりゃ思われへんやろな。
小「友達とかに言うてもええんやけどさ、ホンマに大切にしとる気持ちやから。
できたら話のネタには使わんでな」
何度も何度も頷いてくれる。
ええ子なんよな、そんなん1年間クラス見てたらわかる。
生1「正直に言ってくれてありがとうございました...!」
一度頭を下げてから顔をあげれば、振り返って廊下をかけてく。
その姿が酷く眩しくて、俺は目を細めた。
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作者名:のら | 作成日時:2020年9月8日 12時