夏にとける side N.K (ページ11)

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「え、それで藤井先輩ミスターコン参加したの！？」

小「もう女子が煩くてしゃーないから特別審査員って枠でな(笑)」

俺もツインタワーの片割れいうて借り出されて大変やった。

ほんま勘弁してって思ったけどこれもいつか自慢の思い出とかになって。
自分の子供とかに嬉しそうに話すんやろうか。

その時俺の隣におってくれる人は、誰なんやろう。
それがAなら、ええのに。

急に寒くなってきたよね、今年の秋は一瞬かなぁなんて言いながら焼酎をちびちび口にはこぶ元同級生とはかれこれ15年の付き合いになる。
って事は片想い歴も10年は越えとる訳で。

途中何度も他所見した。
他所見したままでおりたかった。

彼女の持つ吸引力ってなんなんやろう。
今となってはどこが好きかなんて、わからへん。

ただ、俺は今でもこいつから目が離せへん。

小学校は別々やった。

中学校で初めて同じになって。

俺が体育で足擦りむいた時、保健委員だからって誰もいない保健室で彼女が不慣れな手つきで消毒して、絆創膏を貼って。

痛い？ごめんね手際悪くて。
必死に、真剣に、どこか恥ずかしそうに処置をするその子に恋をした。

ほんまに、俺って単純やなぁ。

中学では恥ずかしくて絡むとしてもグループで話すくらい。

高校が同じと知って、バレへんように喜びまくった。

やけど彼女が恋したのは俺の友達。
ほんで俺の友達が恋したのは彼女。

間を裂こうなんて、思えへんかった。
そんくらい2人はお似合いで、幸せそうやったから。

あの時の不思議な感覚は今でも覚えてる。

間違いなく俺は失恋した。

何でこの2人を会わせてもうたんやろとか、多目的室になんか連れて行かなきゃよかったって何度も思った。

やのに2人を見てると幸せなんが伝わってきて、何だか優しい気持ちになる。

ええやん、幸せそうやんってついニヤけそうになる。

俺の中で2つの感情がぐるぐる回ってたあの時。