続・あの日あの時の後ろ側《虹》

、 ページ36

side 重岡


当たり前みたいにAが俺の服を部屋に置くようになった。


2人とも読んどる漫画の新刊は、たまにお互いが買うてくるからダブっとんのも置いてある。


シャンプーなんて何でもいいって言うてんのに、俺専用のシャンプーがある。

...これは自分用のがちょっとええヤツやから使われたくないって言うてたけど。



「あっという間に30歳だね」

重「俺はもうそんなつもりでおるけどな」

「え、そうなの？」

重「おん、やからまだ1年あんのかって感じるし」


はよ、大人になりたい。
俺と同じだけ歳を重ねていくAに、早く安心を与えたい。

気持ちだけならもう十分すぎるほどそう思っとるのに。
普通じゃない仕事がそうさせてくれない。


ジャニーさんはもう首を縦に振ってくれた。
あと1年、30歳になったら。
事務所のお偉いさんに言われとる事はまだAには秘密にしとる。

やけどAは急かすこともせぇへん。
時が来たらって言葉は希望でもあるけど残酷でもある。


いっそ無茶なことしたろうか。
子供でもできたら問答無用で公表せなアカンくなるし。
なんて思ってみてもそんなファンにもAにも不誠実なことする勇気もない。

そんだけ真面目だから安心していられるのってAの言葉に、俺は結構救われとる。



「歳を重ねるのが嫌じゃないって、まだまだ若いねぇ」

重「お前も見た目は変わらんから安心せぇ(笑)」

「うざ」

重「大人の色気のイの字も出てこぉへんなぁ」

「お互い様！ご馳走様！」


手を合わせてから立ち上がるAを見上げて、お、ええ語呂やなって勝手に脳内にその言葉がインプットされた。

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