指先に魔法、耳元に宇宙《緑》

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何でこんな事するのかって言ったら、ずばり仕事後、予定のない休みの日なんかが暇だから。

アクティブな趣味もない私は、だいたい暇な日は部屋で過ごす。


誰かと話したり、お茶したくなっても知り合いや友人は大切だからこそ気を使う。

そんな時、このチャットアプリは最適だ。



話し相手を募集する掲示板を覗けば、大概が暇な人。
気をつけなきゃいけないのは、出会いを求めてる変な人も、すごく多いって事。
あとは寂しがりで依存癖がある人とか。
そういう人は正直、面倒くさい。


普通にどうでもいい話をして、じゃあねって切れるくらいの他人がちょうどいい。
あとは初対面の人とのやりとりって接客の勉強にもなるし。
見た目でどうこう言われないのも、楽ちん。

そんな訳でいわゆる華金を無駄に過ごしている私は、久しぶりに掲示板に書き込みをした。




『22歳 女 暇してます』



こんな書き込みにもすごい数の連絡がくるのは私が女っていうのが理由だと思うし、それはやっぱりそれだけ手軽に出会おうとしてる男の人が多いって事、なんだろうな。


『話そう、どこに住んでる？』
『顔みたい』
『通話したいです』
『どこ住み？迎え行くからドライブしない？』


どれも同じような内容で、正直微妙。
諦めたようにスクロールしてる手がふと止まった。



神『ネイルキレイですね』



私がアイコンにしてるネイルの写メ。
こんな事言ってくる人って珍しい。

もしかして、女の子かも。
相手の名前は、tomo。...うわ、どっちでもありえそう。


アイコンをタップして相手のプロフィール画面を見たけどその名前しか載ってない。

アイコンの画像も深い緑に控えめに光るゴールドのラメと、見切れているシルバーの何か。


それが何なのかまったくわからなかったけど、その深い緑はまるで宝石のような、はたまた宇宙の様な、それとも...深い海？


すぅっと引き込まれそうになる綺麗な緑で。


私は承認のボタンを押してチャットページを開いた。



『コンタクトありがとうございます。
セルフなので嬉しいです』



だけどその夜、私のメッセージに返事が来る事はなかった。

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