来音Side ページ10
俺は、長谷川家の一人娘である唯ちゃんの婚約者。
外側でも、内側でもそう。
やけど、俺がほんまに好きなんは…
そのお姉さん。
俺と、同い年。
幼馴染の愛。
俺の父親の会社は長谷川グループの傘下にあるちっこい会社。
やけど、うちの会社がグループ企業やったおかげで、愛と出会うことができたんやと思う。
愛は、世間には男の子として紹介されとったから。
世間の人たちは、愛の存在を知らん。
今、この日本でこのことを知ってんのは、長谷川姉妹と俺。
ほんで、愛の婚約者の怜生。
この四人だけ。
プラス…
知るつもりはなかったやろうけど、知ってしまった赤園くん。
実は、唯ちゃんの俺の一個まえの婚約者が赤園くんやったんやけど…
婚約者同士の顔合わせの時に、唯ちゃんが行かれへんってなって、姉妹似てるからって愛をその席に座らせた長谷川前社長。
だから、彼の知ってる唯ちゃんは、ほんまもんの唯ちゃんじゃなくてお姉ちゃんの愛のほうなんよな。
ほんまに、この姉妹っていうのがそっくり。
姉妹揃って、綺麗な栗色の毛。
見分け方としては、長いほうが愛。
短いほうが唯ちゃん。
吸い込まれそうな、ガラス玉みたいな大きな目。
見分けポイントは目じり。
愛はめちゃくちゃたれ目で、唯ちゃんはちょっとつり目。
しまいに、涙袋の大きさまでそっくり。
ほんまに、姉妹揃って美人さん。
でも俺、ちっさい頃から愛と一緒におって、彼女の苦労をずっと見てきたから。
守ってやりたいって本気で思うねん。
どう頑張っても、振り向いてもらわれへんのは知ってる。
やけど、俺が好きでいることも俺が黙っとけば誰にも分らん事やから。
あとは、俺の勝手やと思う。
今日も、側におんのにに触れられへん。
もどかしいけど、これでいい。
これでいいんや…
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