第四十七話 「昔ばなし」 ページ48
*
Aside
もう外は暗くなり、冷たい風が私の頬を霞む。
今私がいる場所は正門前で、
時刻は深夜の2時を回ったくらいだ。
利吉さん遅いな...
準備に時間が掛かってるのかな。
そう思って数分後、利吉さんがこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「ごめん、少し遅れた。」
『大丈夫です。準備か何かですか?』
「うーん....まぁそんなところかな。」
はは。と誤魔化すように軽く笑う利吉さん。
怪しい...まぁでも、彼のことだから何かあった時の策か何かを考えてくれていたのかもしれない。
利吉さんに負担がかかるような事は避けたいんだけど...
門をくぐる利吉さんを横目に、私は少し下を向く。
「そんな不安そうな顔をしないでくれ。
私はそう簡単に傷つけられたりしないよ。」
『はい...わかってます。』
私が返事をすると、利吉さんは仕方ないなと言う笑みを浮かべながら、私の頭をポンポンと撫でる。
.....利吉さんを信じよう。それに、彼のことばかりに気を取られてしまうと、それこそ足を引っ張りかねない。
私は軽く息を吐き、利吉さんと共に歩き出した。
*
「この間、君と私は昔会っていた....なんて話をしただろう?」
しばらく道成を歩いていると、利吉さんは私に話しかけに来た。
『はい....でも、やっぱりどうしても思い出せなくて。』
すみませんと謝ると、かまわないよと首を横に振る。
そして、利吉さんは過去を思い出すかのように宙を仰いだ。
「.....私は昔、君に助けられたことがあったんだよ。」
もう何年も前の事なんだけどね、と苦笑いする利吉さんは、
少し照れたように頬を掻く。
助けた....?私が彼を?
そんな覚えはないんだけど....
『それって、どれくらい昔のことですか?』
「そうだな...もう8年くらい経つんじゃないか?」
8年前.....私が8歳の時だ。
あの頃は確か雑渡さんに剣術を教わっていた頃だったような...
その時に利吉さんと会っていたの?
私は思い出そうと、利吉さんに気づかれないようにチラリと目線をやる。
切れ長の目。
真ん中で分けられた前髪。
そして悔しいくらい整った顔立ち....
ほんと...見れば見るほど綺麗な顔。
思い出すために目をやったのに、
私はなぜか虚しくなって視線を元に戻し、ため息を吐いた。
.......ん....?
そういえばあの時似たような人が豪族に絡まれていて....
..........!
もしかして......!
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春の黒猫(プロフ) - 依利さん» コメントありがとうございます!すごく励みになります...頑張ります^ ^ (2020年10月12日 21時) (レス) id: aee551e7f9 (このIDを非表示/違反報告)
依利 - すごく面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年10月11日 21時) (レス) id: ed636e8d4e (このIDを非表示/違反報告)
春の黒猫(プロフ) - 菜々さん» コメントありがとうございます。読者様が苗字を設定しない場合、元々の主人公の苗字を設定しておいて欲しいとの事でしょうか...?一応この小説は苗字と名前の設定が可能になっておりまして、あえて苗字を設定していないのですが...(・・;) (2020年10月9日 16時) (レス) id: aee551e7f9 (このIDを非表示/違反報告)
菜々 - こんにちは読みたい所ですが設定のとこ少し直した方思います参考なったら嬉しいです例えば→夢崎(名前)。こんな感じです読みづらくすみません (2020年10月8日 16時) (レス) id: ea6e979d26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春の黒猫 | 作成日時:2020年9月22日 16時