第三十七話 「傷ついてほしくない」 ページ38
*
「あぁ、そうだ。君が持っていた忍具を返さないといけないな。
長い間取り上げてしまっていてすまなかった。」
『いえ、むしろそれが普通かと....』
いくら歳が低いくノ一だからって何するかわからないし。
いや、何もしないけど。
午後の授業が終わったら返そうと言って、山田先生は教室の方へ向かって行き、土井先生も山田先生の補佐役として行ってしまった。
.......気合入れなきゃ。
ここを出てからが正念場だ。
パンッと両手で頬を叩いて気を引き締め、私も部屋へ戻った。
____________
『新野先生....流石にこの量は風呂敷に入りきらないですよ...』
誰もいない部屋でボソリと呟く。
目の前には新野先生からいただいた大量の薬が風呂敷から溢れていた。
申し訳ないけど、流石にこんなに持っていけないから後で保健室に持っていこう…
「おぉ、それはまた結構な量の薬だね。」
『そうなんです......って...!』
ばっと声がした方を振り向くと、そこにいたのは利吉さんだった。
「もう行くのかい?」
『......はい。」
「そうか。」
しん、と静まりかえる部屋の中。
彼がこの前よりも真剣な表情をしているのは、山田先生から今の私の現状を聞いたからだろう。
「ツキヨタケ忍軍、君の居場所を特定したようだね。」
『はい。
...利吉さんも私に協力してくれるとおっしゃいましたが…危険なのでここは身を引いてくれませんか。』
「なっ....!あの大勢相手に一人で戦う気か!?」
『元々はそのつもりだったんです。城を抜けてきたのも私の判断ですし、関係のない方々を私情に巻き込むつもりはありません。』
私に手を貸してくれると言ってくれたときは嬉しかった。こんな私にもまだ味方がいるんだと。
....けれど、なぜかこの人だけは...
利吉さんだけは、傷ついてほしくないと思った。
「手を貸すと言ったじゃないか...!」
『...その気持ちだけで十分です。』
この先何が待っていようと、私は全て受け入れるつもりだ。
例え死が待っていようとも。
『.....城にいた頃は毎日が地獄のような日々だったんです。
何があっても城主の名に背いてはいけない....そんな中で過ごしていくのが、私にとって一番の苦痛でした。』
「.....」
『どうせ死ぬのなら、そんな地獄のような場所よりも別の場所の方が良いでしょう?』
*
159人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
春の黒猫(プロフ) - 依利さん» コメントありがとうございます!すごく励みになります...頑張ります^ ^ (2020年10月12日 21時) (レス) id: aee551e7f9 (このIDを非表示/違反報告)
依利 - すごく面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年10月11日 21時) (レス) id: ed636e8d4e (このIDを非表示/違反報告)
春の黒猫(プロフ) - 菜々さん» コメントありがとうございます。読者様が苗字を設定しない場合、元々の主人公の苗字を設定しておいて欲しいとの事でしょうか...?一応この小説は苗字と名前の設定が可能になっておりまして、あえて苗字を設定していないのですが...(・・;) (2020年10月9日 16時) (レス) id: aee551e7f9 (このIDを非表示/違反報告)
菜々 - こんにちは読みたい所ですが設定のとこ少し直した方思います参考なったら嬉しいです例えば→夢崎(名前)。こんな感じです読みづらくすみません (2020年10月8日 16時) (レス) id: ea6e979d26 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:春の黒猫 | 作成日時:2020年9月22日 16時