第二十八話 「再会」 ページ29
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『.....雑渡.....昆奈門さん .....?』
見間違いかと思って目を擦るも、
その人物は紛れもなく雑渡昆奈門だった。
「おや、昔のように先生とは呼んでくれないのかい?」
『.......私はもう貴方の教え子ではありません。』
よいしょ、と声を出して目の前に降りてきたこの人は、私に幼い頃、武術や忍術...そして兵法などを一から叩き込んだ人物だ。
彼のおかげで今の私がいると言っても過言では無い。
私が下を向いて黙っていると、彼が口を開いた。
「数年ぶりに会うというのに、あまり嬉しくなさそうだな。」
『嬉しい嬉しくない以前に、急に消えたのは貴方じゃないですか。』
そう、彼は4年間私に訓育した後、何も言わず急に姿をくらませたのだ。
そしてのちに彼自身が大きな火傷を負ったことを城主から知らされ、
実際にその姿を見るのは今が初めてになる。
『......あの時姿を消したのは、その火傷のせいですか?』
私がそういうと、彼はコクリと頷く。
「そうだよ。
とてもじゃないが、人に見られていい状態じゃなかったからね。」
「今は全然平気だけど」と笑いながら両手をぶらぶらさせる雑渡さん。
火傷で片目を失っていて少し表情が読み取りづらいけれど、人を小馬鹿にするような笑みは昔と全く変わっていなかった。
「見ない間に成長したとは思ったが、相変わらず背は低いままだな。」
『低い方が相手に気づかれにくいでしょう。
貴方とは違って。』
小馬鹿にする彼に、私は鼻で笑って返す。
この人昔から私にだけ物言いが酷いような気がするんだよ....
変にいじるというか何というか....
そんなことを思っていると、なぜか急にその場の雰囲気が変わった。
「確かに小柄なのにはメリットがある。
....が、力ではどちらが強いかな?」
彼がそう言った瞬間だった。
私の視界がグラりと傾き、それと共に左肩に鈍痛が走る。
先程まで自分の5メートルほど離れた場所に立っていた雑渡さんは、ひとつ瞬きをした瞬間、
自分のすぐ目の前に移動し、回し蹴りを食らわせたのだ。
『くっ.......!
......っ、男相手に力では勝てないとおっしゃりたいのですね』
痛みに顔が引きつるも、次の攻撃に備え距離を取る。
私が力で勝てないことをわかってて攻撃してくる....
嫌な人.....
先程の空気とは違い、目の前にいる雑渡さんは殺気を醸し出していた。
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春の黒猫(プロフ) - 依利さん» コメントありがとうございます!すごく励みになります...頑張ります^ ^ (2020年10月12日 21時) (レス) id: aee551e7f9 (このIDを非表示/違反報告)
依利 - すごく面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年10月11日 21時) (レス) id: ed636e8d4e (このIDを非表示/違反報告)
春の黒猫(プロフ) - 菜々さん» コメントありがとうございます。読者様が苗字を設定しない場合、元々の主人公の苗字を設定しておいて欲しいとの事でしょうか...?一応この小説は苗字と名前の設定が可能になっておりまして、あえて苗字を設定していないのですが...(・・;) (2020年10月9日 16時) (レス) id: aee551e7f9 (このIDを非表示/違反報告)
菜々 - こんにちは読みたい所ですが設定のとこ少し直した方思います参考なったら嬉しいです例えば→夢崎(名前)。こんな感じです読みづらくすみません (2020年10月8日 16時) (レス) id: ea6e979d26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春の黒猫 | 作成日時:2020年9月22日 16時