第十八話 「道具」 ページ19
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「これが化膿止めで、これが痛み止めです。朝昼晩、食後に1回ずつ飲んでくださいね。」
『わかりました。』
新野先生が持って来てくれた湯飲みに水を入れ、朝の分の薬を喉に流し込む。
粉薬.....激にが.....
うへぇ、と今にも声に出しそうな顔をしていると、新野先生が目線を下にしながら何か言いたそうにしていた。
『.......どうかしましたか?』
「あ....いえ、この間怪我をするのは慣れているとおっしゃっていたので...
普段よく怪我をされるような鍛錬をされていたのかなと思いまして。」
『あぁ、その事ですか.....』
まぁ、確かにこれほどの怪我なら側から見れば結構な大怪我だ。
.......それでも私が平気なのは理由があった。
それは新野先生が言う通り、危険な稽古をしていたから。
____私がまだ幼い頃、ある人との稽古で毎日のように怪我を負っていた。
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『........はぁっ....!がはっ』
「後同じところ30発。」
『は......い....っ.....』
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『......幼い頃、私に毎日忍術を教えてくれていた人がいて、その方に人間の"どこ"を"どうすれば""どうなるのか"を教えてもらっていました。』
「人間の急所....のようなものですか?」
『はい....
それも自らの体を使って教わっていたんです。』
「えぇ!?」
急所と言っても言葉で伝えるのは難しく、自分の体を使って覚えた方が学習能力がぐんと上がるらしい。
そう言って、その人は私がどれだけ辛かろうが苦しかろうが稽古を続けさせていたのだ。
『太腿、脇の下、鳩尾....いろいろな急所と呼ばれる部分をどうしたらどこまで動けなくなるのか...
それも全て経験済みなんです。』
だから、これくらいの怪我でも平気なんです。
そう言うと、新野先生は黙って下を向いたまま顔を歪めていた。
「それほどまでして身につけなければいけない事だったのでしょうか....」
『どうでしょうね。
....それも城主の望みだったのでしょう。』
ツキヨタケ城の城主は自分の名誉の為ならなんでもするような人で、使える人間はどんな人間でも使って行く......私もその中の1人だった。
それでも戦災孤児の私を拾ってくれた城主には逆えず、はいわかりましたと言っているうちに彼の道具に成り下がってしまったのだ。
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春の黒猫(プロフ) - 依利さん» コメントありがとうございます!すごく励みになります...頑張ります^ ^ (2020年10月12日 21時) (レス) id: aee551e7f9 (このIDを非表示/違反報告)
依利 - すごく面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年10月11日 21時) (レス) id: ed636e8d4e (このIDを非表示/違反報告)
春の黒猫(プロフ) - 菜々さん» コメントありがとうございます。読者様が苗字を設定しない場合、元々の主人公の苗字を設定しておいて欲しいとの事でしょうか...?一応この小説は苗字と名前の設定が可能になっておりまして、あえて苗字を設定していないのですが...(・・;) (2020年10月9日 16時) (レス) id: aee551e7f9 (このIDを非表示/違反報告)
菜々 - こんにちは読みたい所ですが設定のとこ少し直した方思います参考なったら嬉しいです例えば→夢崎(名前)。こんな感じです読みづらくすみません (2020年10月8日 16時) (レス) id: ea6e979d26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春の黒猫 | 作成日時:2020年9月22日 16時