第十六話 「優しさ」 ページ17
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それにしても不思議だ。
土井先生から全く疑いの目が向けられない。
たかが一生徒を助けただけの人間にここまで近く接するなんて....
しかも普通の人間ならまだしも、私はくノ一なのに。
『土井先生は私を疑わないんですね。』
考え込んでいる事が思わず口からポロッと出てしまい、慌てて口を押さえる。
.....遅かったけど。
「急だなぁ.....
まぁ、その傷も相手から故意に受けるとしては深すぎるからな。」
『........それでも、今時これくらいの怪我を負ってまで任務を遂行する忍びはそこら中にいますよ?』
うーん、そうなんだがなぁ....なんて頭を悩ませる土井先生は疑うことを知らないのだろうか。
いや、そんな事は無いのだろうけども。
「実は君を学園に連れてきた時、6年は組の善法寺伊作から色々話を聞いていたんだ。」
『あぁ、あの茶髪の...』
土井先生が聞いた話によると
知らない人間に殺気を向けてまで助ける忍びは滅多に居ないし、腕の立つ忍者ほど無関係な人間など眼中に無いのに彼女はそうしなかった。
....と話していたらしい。
「別に彼の話していたことを間に受けている訳じゃないが、たまに見せる柔らかい表情を見るとそんな感じがするなぁと思っただけだよ。」
だから私は疑わない。そう言って、土井先生は残ったお茶をぐびっと飲み干した。
『............優しいんですね』
「それは君の方だろう?」
『....どうでしょうか。』
先生や善法寺君はそう言ってくれるけど、
私は優しい人間なんかじゃない。
優しさなんて結局は自分の為なのだから。
彼を助けたのも、巻き込んでしまうことで大事になってしまうのは目に見えている。
忍びは影に生きる者。決して目立ってはならない......
私はいつだってそうしてきた。
今も、昔も............
「Aくん?」
『あ.........すみません、少し考え事を....』
「無理もないさ、君は追われている身なんだから。」
そうですね....なんて言葉をこぼした後、考え事を体の奥底に仕舞うようにお茶を喉に流し込んだ。
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春の黒猫(プロフ) - 依利さん» コメントありがとうございます!すごく励みになります...頑張ります^ ^ (2020年10月12日 21時) (レス) id: aee551e7f9 (このIDを非表示/違反報告)
依利 - すごく面白いです!更新楽しみにしてます! (2020年10月11日 21時) (レス) id: ed636e8d4e (このIDを非表示/違反報告)
春の黒猫(プロフ) - 菜々さん» コメントありがとうございます。読者様が苗字を設定しない場合、元々の主人公の苗字を設定しておいて欲しいとの事でしょうか...?一応この小説は苗字と名前の設定が可能になっておりまして、あえて苗字を設定していないのですが...(・・;) (2020年10月9日 16時) (レス) id: aee551e7f9 (このIDを非表示/違反報告)
菜々 - こんにちは読みたい所ですが設定のとこ少し直した方思います参考なったら嬉しいです例えば→夢崎(名前)。こんな感じです読みづらくすみません (2020年10月8日 16時) (レス) id: ea6e979d26 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春の黒猫 | 作成日時:2020年9月22日 16時