竜胆の花束を貴方に(煉獄杏寿郎)2

招集 ページ10

『ま！！こんなもんだろ！！』
そう言うと天元はAの頭を、ぽむちぽむちと軽く撫でた。 「でも、完全に当てるまでにはいきませんでした…」
そう言うとAは、己の投げたクナイを見つめる。
そのクナイは、動く嫁達を通り越した木に刺さっている。
(皆の動きが早くて当たらなかったんじゃない…当てたくない私の反応が鈍いんだ…)
Aは、そう思いながら悔しげに下唇を噛む。
『動く的に瞬時に反応して、クナイを投げられるようになった。派手に成長してんじゃねぇか！んな地味な顔してんじゃねぇよ！！』
そう言うと天元はAの髪の毛を混ぜるようにして、撫で回した。
『なんで当てられなかったか、お前自身が分かってるなら、地味に重ねるような指摘はしねぇよ』
にっと笑うと天元は、Aのおでこを人差し指で弾く。
「！？…ありがとうございます…」
これ以上落ち込まないようにとの配慮だろう…と思うと、Aの心はぽかぽかと暖かくなるようだった。


『ｶｧｧ!!ｶｧｱｱ!!緊急招集ゥ!!緊急招集ゥ!!至急A八本部へ向カエェ!!』
天元と話しているとその頭上を、伝令を伝えながら彩星が旋回する。
「私だけ…？」
『御館様がお前に何か伝えたいって事だろ…一人じゃ無理だろうから、この俺様が連れてってやるよ！！』
そう言うと天元は、Aの静止も聞かず、肩に担ぐと本部へと駆け出した。

『すまなかったね天元。Aも急に呼び出してすまなかったね。』
「い…いえ。」
散々、止まって欲しいと叫び続けたAは疲弊したのか、かなりぐったりとしている。
『宇随…Aに無理をさせないで貰いたい！！』
A達が本部へ到着すると、同じ様に呼び出されたらしい杏寿郎が、御館様の前に膝を着いていた。
『御館様を地味に待たせる訳にはいかねぇからな！！』
(だからあんなに飛ばしたのか…)
Aは先程まで圧迫されていた胃の辺りをそっと撫でた。
『A、君を呼び出したのは他でもない。杏寿郎と共に無限列車の任務に当たってもらいたいんだ。』
「無限…列車？」
Aは御館様の言葉を反芻する。
『短期間の内にその汽車で四十人以上が行方不明となっている！数名の剣士を送り込んだが、全員消息を絶った！だから柱である俺が行く！』
Aの疑問に答えるように、先程御館様から受けた任務の内容を、杏寿郎が伝えた。
「なるほど…私でお役に立てるなら。」
しばらく思案したAは、御館様を見つめるとこくりと頷いた。

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