竜胆の花束を貴方に(煉獄杏寿郎)2

鍛錬3 ページ5

『地味に外す回数減ってきたな』
天元はAが投げたクナイが刺さる的を見て、声を上げた。
「不出来な私に、三人が何度も教えてくれたおかげです！」
Aは天元の言葉に嬉しそうに微笑みながら、須磨・雛鶴・まきをへと視線を向ける。
『いえいえ〜Aちゃんの頑張りですよ！』
須磨は少し照れながらそう答える。
『よく頑張ってたしね！』
まきをも、うんうんと頷く。
『よく投げ出さずに頑張りましたよね』
雛鶴は、ふわりと微笑んだ。
「ありがとうございます！」

『んじゃ、次の段階に進むか！』
天元は、にっと笑うとAへと視線を向けた。
「次の段階？」
その言葉にAが首を傾げれば、ずいっと人差し指を向けられる。
『動く的に当てる、だ！！派手に単純だろ！？』
「動く…的？」
Aがその言葉を繰り返せば、天元は顎でAの後ろを示す。
『お前は、逃げ回る嫁達についた“防具”を的にして当てろ』
「え！？待ってください！危なすぎます！！」
Aは怯えた表情で首を横に、ぶんぶんと振る。
『あのなぁ…止まってる的に当てるなんて、誰にでも出来んだぞ？それと！“防具”に当てろっつってんだろ？嫁に当ててみろ…派手に血祭りだぞ？』
最後の天元の声は地を這うほど低く、Aは背筋が凍るような気がした。
『大丈夫ですよぉ！こう見えても私たちくノ一ですし！』
須磨がAを励ますように声を掛けた。

「っ…」
Aはクナイを持ち、防具を付けた須磨・雛鶴・まきをと対峙するように立っている。
「ﾋｭｯ…ｯ…なさい…ごめんなさい…ごめんなさい！」
小刻みに震えていたAは、段々と呼吸が浅くなりクナイを持つ手を抱きしめるように胸に引き寄せ、何度も謝罪の言葉を繰り返す。
《派手に怖ぇよな…こいつの血は特別って言っても、こいつ自身は“堅気の人間”だしな。攻撃したっつっても、鴉に自分の血を染み込ませた布を、鬼に落とさせただけだしなぁ…》
その姿を見ていた天元は、Aに近づくとぽんっと頭に手を置いた。
『派手に気にすんな！最初っから出来るわけねぇんだよっ。俺らはお前が任務で鬼と戦う術を与えようとしてる。けどな、お前の心が潰れちまったら、何の意味もねぇんだよ！』
わしゃわしゃと頭を撫で回す天元の言葉に、Aは己の視界がゆらゆらと揺らぐのを感じた。

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