竜胆の花束を貴方に(煉獄杏寿郎)2

それは…4 ページ36

Aの様子に満足した杏寿郎は晴れやかな笑みを浮かべると、女性隊士達の元へと向かって行く。
その背中越しに見えた女性隊士達の頬は赤く染まり口元を押えている。
Aはそんな女性隊士達の様子に更に恥ずかしくなり、己の画面を隠すように両手で顔を包むと、背を向け杏寿郎達とは逆方向へと軽く駆けて行った。


(恥ずかしかったぁ…)
Aは軽くため息をつくと、まだ煩く音を立てる胸にそっと手をあてた。
(しのぶさんの言った通り、杏寿郎さんはあんなに私の事を思ってくれてる…)
ぽかぽかと暖かくなる胸につられて、Aはふわりと微笑んだ。
『Aちゃぁぁあん！！！』
突然呼ばれた己の名にAが振り向くと、蜜璃が手を大きく振りながらこちらに駆けてくる。
「蜜璃ちゃん！」
Aも同じように大きく手を振り返した。
『無限列車のこと聞いたわ！上弦の鬼と対峙して勝なん、凄いことだわ！』
蜜璃の言葉にAは微笑んだ後、きゅっと表情久を引きしめた。
「もっと皆の力になれるように私も頑張らなきゃ…あんなに大怪我をする人が出なくて済むように…」
『Aちゃん…』
蜜璃はAの言葉を聞き驚いた表情をした後、ふわりと微笑みぎゅっと抱き寄せた。
『次にまた生きて会えるか分からないけど…頑張りましょうね』
蜜璃の言葉に滲む覚悟の大きさにAは息を詰めると、こくりと頷きそっとその背中に手を添えた。

「あ！そうだ、蜜璃ちゃんに聞きたいことがあったの」
しばらく蜜璃の腕の中で大人しくしていたAは、思い出したように顔を上げた。
『何かしら！私で答えられることなら答えるわ！』
「りんきって何か教えて欲しいの」
『……ぇぇぇえええ！！り、りんき！！Aちゃん、りんきってそんな！Aがそう言うってことは、煉獄さんとのことよね！？きゃぁぁああ！！』
「えっ！？あ、いや、そうだけど...え？」
急に悶え始めた蜜璃にAは驚いてしまう。
ふぅ…と自分を落ち着かせた蜜璃は、そっとAの耳元に唇を寄せる。
『りんきって、自分が想う殿方が違う女の子と話してるとモヤモヤしちゃう…そういう気持ち』
「っ！？」
ひそひそと耳打ちされたそれは正に先程までの自分で、Aは耳元まで赤く染め息を飲んだ。
『きゃぁぁあ！Aちゃんかわいい！！』
蜜璃は可愛いと言ってくれたが、Aは自分の嫉妬心を暴かれたようで恥ずかしくてたまらず、足早に己の病室へと戻ることにした。

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