竜胆の花束を貴方に(煉獄杏寿郎)2

寄り添う ページ29

(なんだか…杏寿郎さんって女性の扱いに慣れてる？)
ふと浮かんだ思いにAが悶々としていると、杏寿郎は何かに気づいたらしく、Aの表情を伺うように顔を覗き込んだ。
『難しい顔をしているな！どうした！？』
声は溌剌としているが、やはりその眼差しは甘やかだ。
「杏寿郎さんって……今までに何人とお付き合いしてきたんですか？」
Aは俯き、ごくり…と意を決したように言葉を紡ぐ。
『……』
杏寿郎が答えないのを不思議に思い、顔を上げれば微笑んだまま固まった杏寿郎と目が合った。
「……え？」
『よもや…俺をすけこましか何かだと思ったのか？』
「すけこまし？」
聞きなれない言葉にAは小首を傾げる。
『俺は、女子と逢瀬をしたことなど一度もない。』
杏寿郎のその言葉を聞き、Aは軽く目を見開いた。
「こんなに、女性の扱いに慣れてるのにですか？」
Aは心に渦巻いた疑問を思わず口にする。
『まぁ…なんだ…指南は受けていは居るがな！』
そう言うと杏寿郎は、ふいっ…とAから視線を外した。
「指南…？」
Aはその言葉を繰り返すと、ゆっくり俯いた。
『む！？どうした！？』
「誰に…受けたんですか？」
か細い声で問いかけるAは、俯いている為その表情は杏寿郎にはわからなかった。
『それは…言えん！』
杏寿郎がそう答えると、Aは勢い良く顔を上げる。
「何処ぞの女と！そっ！そういうことしたんですか！？」
羞恥なのか悲しさなのか、Aの瞳は涙で揺れていた。


ﾄﾞｻﾄﾞｻｯ！！
『「！？」』
部屋の入口で響いた物音に、Aと杏寿郎がそちらを向けば、千寿郎が絶望した様な表情で立っていた。
『あ、兄上…まさか、そんな…』
『よもや…千寿郎、何を勘違いしているか知らんが…兄は潔白だ！！！』
杏寿郎は、絶望の表情の千寿郎と悲しげな表情のAに挟まれ、慌てふためいているようだった。

『ｸﾞﾌﾞﾌｯ!!いやぁ…ｸｸｯ…お前ら派手に面白ぇな！！』
窓から響いた声に杏寿郎・千寿郎・Aが振り向けば、そこには窓のさんに座っている天元が居た。
『宇隨…』
ニッと笑ったら天元は窓のさんから降り、Aの方へと歩み寄る。
『よく頑張ったな。そんなお前に褒美だ！派手に受け取れ！！』
そう言うと、天元はAに一冊の冊子を差し出した。
「？ありがとうございます…」
Aはそっと冊子を開くと、頬を一気に染め上げ冊子を勢い良く閉めた。

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