検索窓
今日:18 hit、昨日:4 hit、合計:5,763 hit

進展?2 ページ25

「杏寿郎さん……」
Aは痛む身体を堪えて、ゆっくりと起き上がる。
『寝ていなさい。まだ辛いだろう』
そう言うと杏寿郎は部屋へと入り、ゆっくりとAへと近づいていく。
「ご迷惑をお掛けしました。」
『迷惑などと思っていない。だた……』
「ただ?」
『酷く心配した』
「っ!?ごめんなさい」
“心配した”と言葉を紡いだ杏寿郎の瞳は、ゆらゆらと不安げに揺れていた。
その瞳を見たAは、己の胸が締め付けられるような気がした。
『煉獄さんも、ちゃんと伝えないと駄目ですよ』
そう言うとしのぶは部屋を出て行ってしまい、杏寿郎はしのぶの座っていた椅子にそっと腰掛けた。

「すみません…どうしても、自分の言葉で千寿郎くんに、杏寿郎さんの無事を伝えたかったんです。」
Aは、枕を緩衝材代わりに腰と壁の間に挟み座ると、そっと己の指先を見つめた。
『君のその心遣いには感謝する。しかし、蝶屋敷に君がいないと知った時…千寿郎の腕の中で真っ青になり、血塗れになったその手を見た時…心底肝が冷えた。』
そう言う杏寿郎の声は、普段の溌剌としたものではなく、どこか落ち込んだような声色を含んでいた。
「すみません…自分の怪我の度合いをちゃんと把握できてないなんて『違う!』っ!?」
己の言葉に被せる様に声を上げた杏寿郎に、Aは思わずビクリと身体を震わせた。
『違うんだ…君が居なくなるのが恐ろしいと思ったんだ。』
「本当に…後輩思いですね。」
杏寿郎の言葉にAはふわりと微笑む。
『後輩などと思っていない。君のことを好いているからだ…女子として。』
「へ……ぇ?だって……え?あれ?責務は?」
杏寿郎の言葉に一瞬思考停止したAだが、思い浮かんだ疑問を杏寿郎に問いかける。
『確かに、俺には“全うすべき責務”がある。もしかしたら、君よりもその責務を、優先せねばならない時があるやも知れん!それでも…君は俺を好いていると、言ってくれるだろうか?』
最後の言葉は、どこか不安げな色を含んでいて、杏寿郎の瞳も幾分か揺らいでいるように見える。
「……そんな杏寿郎さんだから、好きなんです。」
『俺も君のことを好いている』
Aの言葉を聞いた杏寿郎はそっと手を伸ばし、柔らかいその頬に己の手を滑らせる。
『泣かないでくれ…』
眉尻を下げながら杏寿郎は、Aの目元をそっと撫でる。
「嬉しくても、涙って出るんですね……」
ふわりと微笑んだAの後頭部に手を添え、杏寿郎は胸元へと引き寄せた。

進展?3→←進展?



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.1/10 (10 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
39人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

さや(プロフ) - 更新ありがとぉ〜!いつにも増して引き寄せられるのたまらない(´﹃`)のらは状況を説明してくれる文がほんと丁寧だから、アクスタを前に妄想しながら読んじゃったよ(*ˊᗜˋ*)w‪いい萌えをありがとう♡!! (2023年2月27日 1時) (レス) @page37 id: 7025e10926 (このIDを非表示/違反報告)
cocoa152(プロフ) - さや、コメントありがとう♡やっと再開(´;ω;`)待っててくれてありがとうー!!(*´˘`*)♡ (2022年10月23日 21時) (レス) id: 5021f8e528 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - のらの新話がもう読めた(;//Д//)‼すけこまし扱いされてる煉獄さん助かる(੭ु//́Д/̀/)のら再開ありがとぉ♡♡ (2022年10月23日 21時) (レス) @page29 id: 7025e10926 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - cocoa152さん» 一応お伝えします。鬼滅の妖怪奇談にでているジバニャンやかごめの台詞は、兵庫水軍と犬夜叉異聞路という私の別の作品に在ります。宜しければ其方も是非。まだ完結はまだですが… (2022年4月25日 21時) (レス) id: e0b3c2b120 (このIDを非表示/違反報告)
cocoa152(プロフ) - みこち様、初めまして。コメントありがとうございます✨楽しんで頂けて嬉しいです(*≧▽≦)読みに行かせていただきますね♪ (2022年4月25日 18時) (レス) id: 5021f8e528 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:のら | 作成日時:2022年3月26日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。