竜胆の花束を貴方に(煉獄杏寿郎)2

進展？ ページ24

「ぅ……ん？」
ゆっくりと浮上する意識に、Aはそっと瞼を持ち上げた。
「あれ？」
目だけできょろきょろと周りを見渡すと、怒気を放つしのぶと目が合った。
『言いましたよね？興奮が解ければ、痛みが酷くなると』
「あ…」
どす黒い笑みを浮かべるしのぶに、Aは声を詰まらせた。
『利き手の傷が開いていました。無意識に握りしめていたんでしょう……出血が酷く失神したんでしょう。再度縫いましたが、暫くは無理をしないようにして下さい……絶対に』
「ごめんなさい……」
しゅん…としながらAは謝罪の言葉を口にする。
『はぁ……。もう次にこんなことをしたら許しませんからね？』
約束ですよ？と差し出されたしのぶの小指に、Aは己の小指を絡ませた。

『煉獄さんが連れてきてくれたから良いものの、ほんとに心配したんですよ？』
妹を叱るように紡いだしのぶの言葉にAは首をすくめた。
「あれ……？」
『どうしました？』
(そう言えば……杏寿郎さん、“好いた女子”って言ってた？)
『Aさん？』
しのぶが問いかけると、みるみるうちにAの頬が染っていく。
(でも、“全うしなければならない責務がある”って言われたじゃん……意識が朦朧として都合のいい妄想でもしたのかな…)
今度は、Aは明らかに落胆した表情になる。
『百面相ですね…』
ふふふ…としのぶが笑を零したことで、Aは現実に戻されたらしく、はっとした表情になる。
「ずません…ちょっと考え事を」
焦ったようにから笑いをするAに、しのぶは微笑みながら小首を傾げる。
『煉獄さんのことですか？』
「っ！？」
『あら、正解みたいですね。』
にこにこと楽しそうに笑うしのぶに、Aはバツが悪そうに首をすくめた。
「あの場で…思わず気持ちを吐露してしまって、“全うする責務がある”って断られたのに、杏寿郎さんの言葉を良いように受け止めようとするなんて…迷惑でしかないですよね」
ははは…と笑うと、Aは軽くため息をついた。
『その真意はご本人に聞いてみてはどうでしょうか？』
「真意？……でも、実際にそう言われてしまっていますし、もう一度断りの言葉を聞くのは流石に堪えます……」
寂しげに呟くAの頭をそっと撫でるとしのぶは、ゆっくりと立ち上がる。
『やはり、お互いにちゃんと話をするべきだと思いますよ？煉獄さんもそう思いますよね？』
「？」
しのぶの視線を追いかけ部屋の入口へと視線を向ければ、そこには杏寿郎が立っていた。

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