31-5 ページ33
凛香ちゃんのツンデレ発言の後の赤羽君のその言葉で自分の後ろを振り返るシロさん。殺せんせーはイトナ君を捕まえていたネットの機械を根本から外していた。
イトナ君に絡まっているネットはイトナ君の触手を溶かしていた。磯貝君と前原君の指示で、私は余っていた毛布をネットと触手の間に挟んだ。
「去りなさいシロさん。イトナ君はこちらで引き取ります。あなたはいつも周到な計画を練りますが…生徒達を巻きこめばその計画は台無しになる。当たり前のことに早く気づいた方がいい」
「………………。
モンスターに小蠅たちが群がるクラスか。大層うざったいね。だが確かに私の計画には根本的な見直しが必要なのは認めよう」
「………」
「くくれてやるよそんな子。どのみち2〜3日の余命。皆で仲良く過ごすんだね」
シロさん達が去っていき、残された私達はぐったりと横たわるイトナ君に視線を向ける。
「イトナ君に力や勝利への病的な執着がある限り…触手細胞は強く癒着して離れません」
触手は意志の強さで動かす物。時間が経ってしまえば肉体は強い負荷を受け続けて衰弱し、最後は触手もろとも蒸発して死んでしまう。
「…それは、いくらなんでもかわいそーだな」
「後天的に移植されたんだよね?」
「ええ」
「なんとか切り離せないのかな」
触手を完全に切り離すにはイトナ君の力への執着を消さないといけない。そのためには
「…でもなー、この子心閉ざしてっから」
「身の上話なんて素直にするとは思えねーな」
「そのことなんだけどさ」
「不破さん」
携帯ショップばかり襲っていたイトナ君が気になって、律ちゃんにイトナ君に繋がる機種や戸籍を調べてもらっていたという。
その調べられた結果は私達の携帯にも共有されて、私は有希子ちゃんと一緒に一つの画面を眺めた。
堀部電子製作所という会社の息子がイトナ君。
世界的にスマホの部品を提供していた町工場だったけれど、一昨年に負債を抱えて倒産。社長夫婦はイトナ君を残して雲隠れ。
なんとなく、イトナ君が「力」や「勝利」を欲しがる理由を、この場の皆が想像できた。
「ケ、つまんねー。それでグレただけって話か」
「寺坂!」
58人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:野乃梅 | 作成日時:2023年7月30日 0時