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『あ…』
「一緒にいんのは確か…C組の土屋佳穂」
「はっはー、相変わらずお盛んだね彼は」
土屋佳穂。私がE組に来る前に同じクラスだった生徒。
「ほうほう。前原君、駅前で相合傘…と」
聞き覚えのある声の方向に目線を移せば、木の影に隠れて前原君の様子を記録している殺せんせーがいた。
「相変わらず生徒のゴシップに目がねーな殺せんせー」
「ヌルフフフ、これも先生の務めです」
生徒のゴシップと教師としての仕事って何か関係あるのだろうか。
「3学期までに生徒全員の恋話をノンフィクション小説で出す予定です。第一章は杉野君の神崎さんへの届かぬ思い」
「…ぬー…出版前に何としても殺さねば」
少しメモの中身が見えたのだが、どんどん遠ざかる有希子ちゃんと有希子ちゃんを追おうと手を伸ばそうとする杉野君との関係がなんというか、現実的である。
「そして、第二章では磯貝君の重森さんへの…」
「「あ゛ーー！！」」
『！？！？』
殺せんせーの話の途中でカエデちゃん達が叫び出したのでこちらも驚いてしまった。
第二章は一体誰の恋愛のことだったのだろうか…
『でも、前原君の章は長くなりそうだよね』
「うん。モテるから結構しょっちゅう一緒にいる
スポーツ万能で行動的。側から見ても目を引くあの容姿。普通の学校なら成績も上位で、もっと人気者だったかもしれない。
でも、今一緒にいる土屋さん。彼女は…
「あれェ？佳穂じゃん、何してんだよ」
「あっ！！せ、瀬尾君！！
生徒会の居残りじゃ…」
「あー、意外と早く終わってさ。ん？そいつ確か…」
「ち、違うの瀬尾君、そーゆーんじゃなくて…」
本校舎の生徒会のメンバーの1人が土屋さんを見かけて声をかけたら、土屋さんは前原君を押しのけてそちらに走って行った。
「たまたまカサが無くてあっちからさして来て…」
「今朝持ってたじゃん」
「が、学校に忘れて…」
「……」
いくら恋愛に疎い私でもわかるような言い訳。土屋さんは前原君とあの人に二股をかけていたのだ。
「あー、そゆ事ね。最近あんま電話しても出なかったのも急にチャリ通学から電車通学に変えたのも。で、新カレが忙しいから俺もキープしとこうと？」
「佳穂おまえ…」
「ち、違うって、そんなんじゃない！！そんなんじゃ…………」
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作者名：野乃梅 | 作成日時：2023年4月2日 22時
