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「渚君、やる気はあるか？」
「…！？」
烏間先生が鷹岡さんの投げた本物のナイフを拾って足を向けたのは、渚君だった。
その場の皆が、どうして渚君を選んだのかを分からずに戸惑い始める。
「選ばなくてはならないならおそらく君だが、返事の前に俺の考え方を聞いて欲しい」
地球を救う暗殺任務を依頼した側として、烏間先生は生徒達とはプロ同士だと思っていると言った。
プロとして生徒達に払うべき最低限の報酬は、当たり前の中学生活を保障する事だと思っていると。
「だからこのナイフは、無理に受け取る必要は無い。その時は俺が鷹岡に頼んで…「報酬」を維持してもらうよう努力する」
「ククク。烏間、土下座でもすりゃ考えてやるがね」
烏間先生に対しての第一印象は、「あんまり笑わない人」だった。
でも、どんなに不器用でも烏間先生は真っ直ぐ目を見て話してくれるし、私達のことをちゃんと考えてくれている。
この場では教師だけど、本当は防衛省の人。立場上私たちに隠し事も沢山あるし、謎も多い人ではあるけど、この人の言葉は信頼できる。
「やります」
「おやおや…」
渚君は烏間先生からナイフを受け取った。
渚君の出した答えは、YESだった。
「おまえの目も曇ったなァ烏間。よりによってそんなチビを選ぶとは」
「渚君、鷹岡は素手対ナイフの戦い方も熟知している。全力で振らないとかすりとしないぞ」
「…はい」
誰が見ても暗殺の評価が高いであろう磯貝君や前原君ではなく、渚君を選んだ烏間先生。
渚君を選んだのはきっと、烏間先生も何か考えがあったからだ。
烏間先生が渚君と小声で何か話して鷹岡さんと向き合う中、皆渚君のナイフが当たるか不安だった。
「さぁ、来い！！」
構えていた渚君だったけど、笑って鷹岡さんに近づいていく渚君。
まるで通学路を歩くみたいに歩いていく渚君に鷹岡さんもどうしたんだとキョトンとした顔をしていたけど、徐々に自分が殺されかけている事に気付いたようだった。
渚君から振るわれたナイフで体制を崩した瞬間、渚君は鷹岡さんの服を引っ張り転ばせて、まるで蛇のように鷹岡さんを背後から仕留めた。
「あッ…が…」
「捕まえた」
渚君が鷹岡さんに勝った。
誰もが渚君が鷹岡さんにナイフを当てられるのか不安だった。
私達は目の前で見た光景に思わず口が開いてしまうくらい驚いた。
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作者名：野乃梅 | 作成日時：2023年4月2日 22時
