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『ゆ、有希子ちゃん…！！』
「大丈夫、佳奈ちゃん」
カエデちゃんに支えられている有希子ちゃんに咄嗟に駆け寄った。
有希子ちゃんは大丈夫たって言うけど、叩かれてしまった頬は赤く腫れていた。
「文句があるなら拳と拳で語り合おうか？そっちの方は父ちゃんは得意だぞ！！」
「やめろ鷹岡！」
私たちの異変に気付いたのか、烏間先生が校舎から駆けつけてきた。
「大丈夫か？首の筋に痛みは無いか」
「烏…間先生、大丈夫です」
「前原君は？」
「へ……へーきっス」
大丈夫と言う有希子ちゃんだけど、叩かれた頬は赤く腫れてしまっている。前原君も、磯貝君に支えられてやっと身体を起こせたところだった。
「ちゃんと手加減してるさ烏間。大事な俺の家族だ、当然だろ」
暴力を振るっておいて、当たり前のように「大事な家族」と口にする鷹岡さんを背に、私は自分の拳を握りしめていた。
大事な有希子ちゃんをこんな風に痛めつけられて、平気でいられるはずなんてなかった。気づけば私は鷹岡さんを睨みつけていた。
「いいや、あなたの家族じゃない。私の生徒です」
「殺せんせー！」
殺せんせーの声がしてハッとする。殺せんせーも鷹岡さんに対して怒りを露わにしていたが、鷹岡さんはそんな殺せんせーに怯える事無く話出した。
「フン、文句があるのかモンスター？
体育は教科担任の俺に一任されているはずだ。そして今の
つらつらと言葉を並べる鷹岡さんに、殺せんせーは何も言い返すことはできなかった。
鷹岡さんもこの場では殺せんせーと同じく先生であり、教育方針だって人それぞれ。
そうしてこの地獄の訓練の授業の幕が開けた。
▽ ▽ ▽
『ﾊｧ、ﾊｧ…』
スクワット100回3セットを始めてどれだけ時間が経っただろうか。
「じょっ…冗談じゃねぇ…」
「初回からスクワット300回とか…死んじまうよ…」
「烏間先生〜…」
このままでは皆が潰れてしまう。
陽菜乃ちゃんが烏間先生の名前を呼んだ時に、鷹岡さんは陽菜乃ちゃんの前に立つ。
「おい、烏間は俺達家族の一員じゃないぞ。おしおきだなぁ…父ちゃんだけを頼ろうとしない子は」
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作者名：野乃梅 | 作成日時：2023年4月2日 22時
