三日月とフラワー(2)【暗殺教室】 (ページ29)

今日:87 hit、昨日:23 hit、合計:20,543 hit

15-6 ページ29

やっぱりさっき理事長先生に対してクレームをつけたのは作戦だったらしいく、同じ事をやり返しても文句を言わさないためだった。
明確に打撃妨害と見做されるのは守備側にバッドが触れた時だけ。全身守備が集中を見出す妨害行為と見做すかは審判の判断次第だけど、さっきのクレームを却下した以上今回も黙認するしか無いし、それは観客達も同じである。

「ご自由に。選ばれた者は守備位置位で心を乱さない」

「へーえ、言ったね。じゃ、遠慮なく」

そうして赤羽君と磯貝君が行動を起こしたのを見て、私も観客と同じように目を見開いた。

《前進どころかゼロ距離守備！！振れば確実にバッドが当たる位置で守ってます！！》

「…………は？」

この状況に異様な空気を放っていた進藤君も目が点になっていた。どれだけ集中していても、あの守備では冷めてしまう。

『磯貝君…』

あんな近いところで守って、バッドに当たっちゃったらどうしよう…大怪我したりしないよね…

「…！！」

思いっきりバッドを振った進藤君。磯貝君と赤羽君はほとんど動かずにかわしていた。

磯貝君がかわしたのを見て思わずホッとする。

「……だめだよそんな遅いスイングじゃ。次はさ、殺すつもりで振ってごらん」

この時点で、進藤君は理事長の戦略に体がついていかなくなっていた。ランナーも観客も、野球の形をした異常な光景に呑まれていた。

《腰が引けたスイングだぁ！！》

赤羽君がキャッチしたボールはキャッチャーの渚君へ。そこから三塁・二塁・一塁とアウトを取り、試合はここで終了となった。
一塁は走っているはずの進藤君は、バッターボックスにへたり込んでいた。

《ゲ…ゲームセット…！！…なんとなんと…E組が野球部に勝ってしまった！！》

「キャーやった！！」

「男子すげぇ！！」

観客達は負けてしまった野球部に文句をつけて帰っていったけど、試合の裏で2人の先生(かんとく)の数々の戦略のぶつかり合いを知らないのだ。

『磯貝君！！』

「！重森」

試合が終わって男子達がグラウンドから出てくる頃、私の足は自然と磯貝君の元へ向いていた。

『試合勝ったね！すごかった』

「おお！女子の方は結果どうだった？」

『いいところまでは行ったんだけどね、やっぱり毎日やり込んでる人達相手だから勝てなかったよ』