三日月とフラワー(2)【暗殺教室】 (ページ12)

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私も虫が苦手なので、ボロボロになった土屋さんを見て少しの罪悪感を覚えてしまった。しかし前原君はきっとそれよりも辛い気持ちだっただろうし、C組にいた時に彼女からちょっとした嫌がらせも受けていた事もあったので、土屋さんには悪いけど恨みが晴らせた気分になってスッキリした気持ちもある。

「はは、状況を把握する余裕も無いだろうね」

「ありがとねぇ、ジャマな枝切ってくれて。それにしても君達えらく身軽だね〜」

「いえいえ、待ち伏せ…いや、木登りの特訓してるので」

そう言って磯貝君達は登りと同じようにスルスルと降りていくが、私はその場を動かずにいた。

「あれ…佳奈ちゃーん、どうしたの？」

『あ、ちょっと…』

動かないのではない。動けないのだ。
殺せんせーがクラスにやってきて、暗殺者としての基礎を身につけたりして登れなかった木も登れるようになった。
でも、階段で足を踏み外してしまってからは、高い所から降りる事に足がすくむようになってしまった。

『(どうしよう…怖くて降りられないなんて言ったら、皆に迷惑かける…)』

射撃部隊の方は人手が足りるからと殺せんせーに言われてナイフ部隊で伐採に回ったのはよかったのだけれど、木から降りられなくなるなら私ってこの作戦で足を引っ張るお荷物ではないか。

「重森！」

『！磯貝君…』

磯貝君の私を呼ぶ声が聞こえて見てみれば、磯貝君は木の下で手を広げていた。

「飛び降りて！！」

『え！！でも…』

「大丈夫だよ！ちゃんと、受け止めるから」

『…！！』

磯貝君は、私を安心させてくれるような魔法でも持っているのだろうか。私自身が磯貝君の言葉で安心したのか、すくんでいた足も何故か飛び降りる準備はできていた。

『わっ』

「おっ…ほら、大丈夫だったろ？」

気づいたら私は磯貝君の胸の中に飛び込んでいた。

後から聞いた話だと、磯貝君は木から降りない私を見て、私が階段から落ちて入院してテストを受けられなかった事が理由でE組に来たことをを思い出したらしい。
だから、私が木から降りるのが怖いと思っていたこともお見通しだったみたいだ。

「し、重森…？」

どうしてこの人は、私のことをいつも気にかけて、話しかけてくれるんだろう。どうしてこの人は、欲しかった言葉をかけて安心させてくれるんだろう。

「おーい…」

どうして磯貝君は、こんなに優しくて、温かいのだろう。