天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ8)

今日:160 hit、昨日:363 hit、合計:18,988 hit

7 ページ8

_____本土

『これは………』

本土に降り立ち、最短距離で目的地へと向かった私たち。指定された場所に着くと、そこにはたくさんの人だかりがあった。

彼らの視線の先には見るも無惨な光景が広がっており、店の正面のガラス戸は粉々に割られ、あちこちに割れた酒瓶が転がっている。

………明らかに普通じゃない。誰の目にもそう写るほど辺りは異様な空気に包まれていた。

「何かあったようだな」

『そうだね』

少し離れた場所から様子を窺い、目立たないよう注意して、近くにいた野次馬の1人に声をかける。

『すみません。何があったんですか？』

「事故だ事故！車が店に突っ込んだんだ！」

『事故、ですか』

「ああ。それと、白いマントを着た人が巻き込まれた気がしたんだが、姿が見えなくてな………ともかく、大騒ぎになっているんだよ！」

『！』

白い、マント………ああ、そういうことか。

『………なるほどね』

私はその人にお礼を告げ、音を立てずにその場を後にする。

思っていたよりも厄介なことになっているな、これは………場合によっては一刻を争う事態になる。

『まさか、桃が先に接触してきたなんてね………どうする？』

「まだそう遠くには行ってないはずだ。探すぞ」

『了解』

審査だけのつもりが、こんな大事になるなんて………どちらにせよ、早く見つけ出してあげないと。罪のない命がまた消えてしまう。

私たちは素早く建物の上に登り、周囲を見回す。この近くで人目につかず、かつ、戦闘が起きても大丈夫そうな場所は………

『………見つけた』

ここから少し離れたところにあったビルの工事現場。今日は工事がお休みなのか、作業している人々の姿は全く見当たらない。

それにも関わらず、ほんの僅かだけど中から煙が立ち上っているのが確認できる。工事してるわけでもないのに、明らかにこれは不自然だ。

「………あれか」

無人もそれに気づいたらしい。入口のバリケードが不自然に破壊されている辺り、ほぼ確実といっていいだろう。

「周りに桃は？」

『いないみたい。全員あっちに行ったんでしょ』

軽く状況を確認しながら短い言葉を交わす。互いに無言で目配せをした後、その場所を目指して私たちは同時に地を蹴った。