天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ7)

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_____船上

先ほど降りたばかりの船に乗り、私と無人は校長に指示された場所へと向かっていた。

私はデッキの柵に寄りかかり、海中にいる魚の群れを覗き込む。船出日和ともいえる穏やかな天候の下、船は本土を目指して進んでいた。

「落ちるなよ」

『いや、私のことなんだと思ってるの？子どもじゃないんだから』

「………実質、子どもだろ」

『なんだって？？？』

無人が言うには、この後に合格者たちを集めた学校説明と校舎の案内が控えているらしい。

なかなかにハードなスケジュールだよね。時間通りに戻ってこれる確証はどこにもないのにさ………というか、今日中に帰ってこれるのかな、これ。

予定が少し狂ったことに不満げな無人をなだめつつ、私は手元の書類をパラパラと捲る。

『今回の合格者は？』

「今のところ、6人だ」

『へぇ………それはまた』

質問に淡々と答える無人だったけど、思っていたよりも多い数に私は正直驚いていた。

羅刹学園の試験はもの凄く難しいわけではないが、簡単に合格がもらえるほど甘くはない。

なんせ、将来自身の命を懸けて桃太郎と戦っていく鬼を養成するための学校だ。

卒業後は危険な世界へと生徒たちを送り出すため、その分責任は重大。生半可なことでは許されない。

それに、試験官は無人が務めている。合理主義の無人のことだから、妥協とか譲歩とかは一切していないだろう。

それにも関わらず、あの無人がこんなにも多くの合格者を出すなんて………それほど、期待大ってことなのかな。その子たちに少しだけ興味が湧いたかも。

どんな子たちだろう………きっと、みんな幼くてかわいいんだろうな。直接会えるかわからないけど、なんだか楽しみになってきたよ。

『それにしても、ちゃんと先生やってたんだ。偉いね』

「………見えたぞ」

素直な気持ちを言っただけなのに、私の言葉を華麗に無視した無人は遠くを見た。

私は肩を竦めつつ、その視線の先を追う。海しか見えなかった景色の中、地平線上に本土が少しずつ顔を出し始めていた。

手元の書類をしまい、私は軽く伸びをする。胸一杯に取り込んだ潮風が高まる気持ちを落ち着かせてくれた。

『さーて………7人目の合格者は出るかな？』

徐々に近づく本土を見据え、私はそう呟く。少しの期待を胸に秘め、私たちを乗せた船はどんどんと進んでいった。