天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ49)

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『それじゃ、また後で』

それぞれのやるべきことをやるため、互いに背を向けて歩きだす。無人が生徒たちの面倒を見ている間、私は必要な物を揃えておかないと。

優先事項はやっぱり服かな。今着てる羅刹学園(うち)の制服だと凄く目立つからね。普通の学校の制服を全員分用意する必要がある。

あとは………ああ、そうだ。一応、アレも用意しといてあげるか。使わずに終わるならそれでいいんだけど、万が一、何か起きたら大変だしね。時間的にもまだ十分余裕があるから、問題ないはず。

『えーっと、他には_____』

一本ずつ指を折りながら必要なものを頭に思い浮かべていたとき、ふと私の足がその場でピタリと止まった。

少し首を傾げながら私は辺りを見渡す。しばらくの間注意深く周りを観察するも、特段変わった様子は見られない。

誰かが物陰に潜んでいて、こっちの様子を窺っているとか、そういう変な気配もない。

『………』

“異常なし”

この状況においてはこの言葉が最適だ。単純に、私の考えすぎだったのかもしれない。まあ、それならそれで別にいいんだけど。

ただ、なんだろう………上手く言えないんだけど、なんかもの凄く嫌な感じがする。何かが二度と戻ってこないような、そんな嫌な予感を。

『気のせい、か』

少しの間その場に立ち尽くすも、振り払うように私は頭を振る。胸に巣くう小さな違和感にはそっと蓋をした。

『………ふぅ』

一つ息を吐いた後、再び私は足を進めた。静かな廊下には私の靴音だけが絶えず響いている。

窓から差し込む月の光がやけに綺麗だった。