天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ47)

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_____羅刹学園

あの後、駆けつけた保健医の指示の下、少女を保健室へと運ぶ。後の事は全て任せ、私は今、鬼ごっこのゴール地点へと向かっている最中だった。

今頃、2組目の鬼ごっこが始まっていることだろう。ここに来る途中では見かけなかったけど、あの少年たちはどうなったのかな。

どっちが負けても恨みっこなしだとは思うけど………まあ、そもそも本気で生徒たちを退学させるつもりはないんだけどね。鬼の血を覚醒させた貴重な存在を野放しにする方がリスクが大きいもん。

あれは緊張感を持ってもらうためにただ言っただけのこと。適当に訓練でもされたら、それこそ時間がもったいないからね。

「A」

『無人………？どうしたの、こんなところにいて。鬼ごっこは？』

人気のない廊下を歩いていたとき、聞き覚えのある声と音に私は驚いて顔を上げる。向こう側から徐々に近づいてくる無人の姿が視界に写った。

「緊急要請だ。これから京都に向かう」

そう言った無人の手元にはむっくんが抱えられている。それを見て、私は大体の状況を把握した。

聞けば、1組目の鬼ごっこが終わろうとしていたときにむっくんが現れたらしい。

むっくんとは獏速通信の獏のことを言い、名前は夢喰。通信履歴を残さずに素早く情報を運び、どんな場所でも必ず情報を運んでくれる優秀な子だ。

海に囲まれ、本土から遠く離れた鬼門島にむっくんがいるのはそういう理由。ちなみに、むっくんの好きな物は肉まんだよ。

『なるほど。詳細は？』

私は無人からむっくんを預かった。すやすやと寝ている様子はいつ見てもかわいい。

無人から聞いた話を簡単にまとめると、中に鬼機関京都隊からの応援要請が入っていたそうだ。桃太郎機関から襲撃を受け、負傷者が多数出ているらしい。

今、羅刹学園で対応できるのは無人と私の2人だけ。さすがに生徒たちを放って行くわけにもいかず、人手が足りていないことから、現場視察もかねて彼らを連れていくことに決めたそうだ。

もちろん、最前線の戦闘部隊ではなく、援護部隊の方。戦闘部隊はあくまでも私たちだけらしい。まあ、それなら確かに生徒たちも安全だし、特に問題ないだろう。

『了解。すぐ準備するね。それと、あの子のことなんだけど_____』

保健医から言われたことを私は無人にそのまま伝えた。少女の回復力にもよるが数日は動けないらしい。今の彼女には絶対安静が必要なんだそう。