天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ46)

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「ご、ごめんなさい………私………っ！」

『おっと』

勢いよく身体を起こしたはいいものの、ふらっと倒れ込んだ少女を私は両手で受け止める。

動きたくても上手く力が入らないのか、少女はぐったりと私にもたれ掛かったまま動かない。身体に負担をかけないよう、私はゆっくりと少女を地面に横たえた。

ただでさえ、血が圧倒的に足りてないんだから、いきなり身体を起こせば眩暈を起こすのは当然だよ。今は安静にしていないと。

『いきなり起き上がったらダメだよ。大丈夫だから休んでな』

「っ………ごめん、なさい………私、本当に………っ」

『謝らないで。何も悪いことしてないんだから』

ポロポロと涙を溢す少女の頭を私は優しく撫でる。

私はこの子の過去を知らないけど、あの能力を見る限り、平穏な生活でなかったことは容易に想像できる。この子に根付く闇は深く、簡単に取り除くことはできないだろう。

だけど………

『あのね、おチビちゃんが謝ることなんて、一つもないんだよ？どれだけ迷惑をかけてもいい。だって、ここは学校なんだから』

羅刹学園は普通の学校とは全く違う。確かにそうは言ったけど、羅刹学園(ここ)が学校であることに変わりはない。

たくさん失敗したっていい。失敗から学べることは君たちが想像しているよりも、たくさんある。失敗を怖がっていたら何も進めない。

『何かあれば私か無人に言ってね。いつでも相談に乗るよ』

「っ、はい………」

いつかきっと、この子を闇から救ってくれる子が現れる。そんな大切な仲間が羅刹学園でできたら………私はとても嬉しい。

「あの、先生………」

『ん？どうかした？』

「その………ハンカチ、汚してしまって………ごめん、なさい………それと………ありがとう、ございます………」

『うん、どういたしまして』

血に濡れた私のハンカチを小さな手で握り締める少女に、暖かな気持ちでいっぱいになる。頭を撫でる手を止めず、少女の気持ちが少しでも落ち着くよう、私は静かに音を紡ぎ始めた。

『～♪』

「(綺麗な、歌声………なんだろう………凄く、暖かい………)」

雨音と相まって、心地好い響きが少女を包み込んだ。穏やかな旋律が少女を眠りの底へと誘う。少女の細やかな抵抗も虚しく、彼女はそのまま意識を手放した。

「お姉、ちゃん………」

お休み、かわいい子どもたち………よい夢を。