天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ45)

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_____数分後

『んっ、ふふふ………あっははははは！』

雨音だけが響く静寂の中、先ほどの光景を思い出していた私は笑いを堪えきれずにいた。人気のなくなった辺りを見渡し、少年たちが消えた方角へと視線を移す。

『まさか、あんな展開になるなんてね………本当に面白い子たち』

タイムリミットまで残り5分30秒。ボールを奪うことを諦めた少年は無人の前から逃げ出し、森の中へと姿を消す。

追いかけるため無人も後に続いたが、なんと少年はその目を掻い潜り、再びここに戻ってきていた。それだけでも十分驚くことなのに、拘束された少年の元へ真っ直ぐ向かい、協力を持ちかける。

『「俺の親父も桃太郎だ」、か………』

いろいろと揉めてたみたいだけど、最終的には目標達成のために手を組んだ2人。私がこの場にいることをすっかり忘れていたらしく、話を聞かれてたことに気づいたときはもの凄く焦ってたっけ。

あの2人の反応、面白かったな。私は鬼ごっこの捕まえ役じゃないし、無人の味方でもないと知った途端、少年たちはわかりやすく安堵の表情を浮かべた。

………まあ、無人の敵でもないって言った覚えはないんだけどね。

ただ、作戦の内容自体は悪くないものだったし、無人が生徒たちに一杯食わされる様を見てみたい気もする。

だから、私はどちらかというと生徒たちの味方。私が溢した独り言(アドバイス)は上手く使ってくれたかな？

少年たちの勇姿が見られないのは少し残念だけど、無事に作戦が成功することを祈っているよ。

『まあ、それはそれで別の問題が起こるけどね』

ボールは1つで彼らは2人。残り時間はごく僅か。どちらもゴールできなければ2人仲良く退学となる。

………さて、どうなることやら。

「ぅ………あ、れ………私………？」

『あ、おチビちゃん、起きた？』

「！？せ、先生………！」

ふと視界の端で動くものを捉え、視線を手元に下ろすと少女の意識が戻っていたらしい。身動ぐ少女に声をかけると真っ青な顔のまま驚いた表情を浮かべた。

さっきよりは気分的にも少し楽になったとは思うけど、貧血であることに変わりはないからね。とりあえず、無事に意識が戻ったようでよかったよ。

場合によっては何日も目を覚まさないとか普通にあるからね。精神的な負荷も大きかっただろうし、もしかしたらそうなるかなって思ってたけど………大丈夫そうで一安心だ。