天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ5)

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『はー………変わってないねぇ、ここも』

門をくぐり、敷地内へと足を踏み入れる。遠くから見たときも大きいなと思ったけど、近くから見るともっと大きく感じる。

『………』

久しぶりだからかな？ちょっと変な感じ。なんだか、まったく知らない別の場所に来たみたいだ。

「遅れるな」

『わかってるよ～』

立ち止まって校舎を見上げていた私を無慈悲に置いていく無人。もう既に、私と無人はかなり離れてしまっている。

………前言撤回。やっぱ無人は意地悪だ。ほんの少し立ち止まっていただけなのに置いていくなんて酷すぎる。

普通さ、待っててくれるもんじゃないの？私、久しぶりに羅刹学園(ここ)に来たんだよ？少しくらい、いいじゃんか。

『あ、ちょ！今、スピード速めたでしょ！待ってってば！』

さっきの仕返しのつもりなのか、歩くスピードを少し速め、無人はさらに私から遠ざかっていく。

さすがに追いかけようと足を動かしたとき、ふっと後ろに気配を感じた。

「無事に着いたんだね、A君。歓迎するよ。いらっしゃい」

『………相変わらず、神出鬼没ですね、校長』

予想通りの人物の登場に驚くこともなく、私は静かに言葉を返す。

振り返った先にいたのは羅刹学園の校長。いつも通りの装束姿と相まって、校長はさらに謎に包まれている。

いつも顔を隠しているから表情が読み取りにくいんだよね、この人………声色とか今までの慣れとかで、なんとなく読み取ってはいるけど。

『改めまして、お久しぶりです、校長。峯雪A、ただいま戻りました』

「うん、お帰り。無人君、君もいたんだね。ちょうど良かった。君たちに行ってもらいたい場所があるんだけど」

指に挟んだ紙をピッと取り出し、私たちに手渡す校長。いつの間に戻ってきてたのか、隣にいた無人は無言でそれを眺めた後、私に寄越した。

「その子で終わりにしていいから。それじゃあ、任せたよ」

言いたいことだけを言って、校長は私たちの前から跡形もなく姿を消す。羅刹学園(ここ)の校長をやってるだけあって、さすがと言うかなんと言うか。

『はあ………』

そんな校長に私は一つため息をついた。

頼まれ事の詳細、早めに聞いておきたかったんだけどな………あの人、自分がここに呼び寄せたってこと覚えてるのかな？

電話をもらった時から薄々感じてはいたけど、今回のは長くなりそうだ。