天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ40)

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「そんな奴らどうでもいいだろ。時間がもったいねぇ」

キンという甲高い音に振り向けば、無謀にも無人に攻撃を仕掛けていた少年の姿が視界に入る。

一匹狼の彼にとって、これから生活を共にする仲間のことは全く興味がないそうだ。一人になりたいお年頃かもしれないけど、そういう考えはかわいくないね。“仲間”っていう存在は君が思うより結構大切なものだよ？

まあ、それは追々教えていくとして………

『………舐められてるのかな、私』

もの言いたげな目で私は2人をじっと見る。

無人に対してはあの子自身が手を下そうとしているのに、私に対しては斬撃だけでどうにかできると思ってたのかな。まさか、本気で言ってるわけじゃないよね？

シンプルに馬鹿にされたようで少しムカつくんだけど………無人よりも劣っていると思われてるのなら、さすがに私、傷つくよ？

「応急処置しないと危険だったら？」

「俺には関係ない」

そんなことを一人考えている私を置いて、無人と少年は互いに距離を取り、言葉を交わす。私のことは完全に無視ですか。そうですかそうですか。

それと、生徒に対して嫌いって言ったらダメだよ、無人。たとえ、その言葉が本心だとしてもね。

………私？私は大丈夫。まだ口に出していないから、ぎりぎりセーフ。

「まずはお前からだ」

そう冷たく言い放ち、私に向かって指を差した少年。

戦闘において突破しやすい相手から狙うのはある意味良い戦術だと思うよ。自分との力量差がある相手に挑んでも勝ち目は薄いからね。もちろん、不可能ではないけどさ。

この子はしっかりと状況を判断して、それをちゃんと行動に移している。それは褒められるべき行為だ。

だけど………さすがにこれは甘く見すぎだよ。

『はあ………別に良いけどさ、その状態でどうやって戦うの？』

「！？」

私はため息をついて立ち上がった後、仰向けに倒れる少年の側に膝をつき、ちょうど心臓の真上辺りに人差し指を立てた。

一瞬の出来事に驚く間もなく、視線を彷徨わせる少年と目が合う。困惑する少年を見た私は笑顔を浮かべ、トンッと軽く彼の胸を叩いた。

『はい、終了………たいしたことないね』

私はサッと立ち上がり、少女の元へと戻る。視界の端には驚きを顕に私のことを凝視する少年たちの姿が写った。

だけど、無人だけは表情を変えることなく、その様子をただ静かに眺めていた。