天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ38)

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「喚くなよ」

好戦的な笑みを浮かべる少年の右腕に表れたのは大きな銃器。赤黒く光る銃器(それ)は彼の血で生成されていた。

「(掴んだのか………？)」

『ふふふ』

先ほどよりもさらに驚いた表情を見せる無人。楽しそうに目を輝かせる少年を見て、私は微笑ましい気持ちになった。

この土壇場で、この成長速度………本当にあの子には驚かされるね。自分の意思で暴走を止めたことに加え、たった半日でコツを掴んだんだから。

「これで戦える！」

そもそも、鬼の血は普通の人間の血とは異なる性質を持つ。それは、「血液の形や強度を自由に変えられる」というもの。

自分がイメージした物が脳から発信され、神経だけじゃなく血管にも伝わっていく。そして、傷口から溢れた血液にイメージが流れ込み、形を造るのだ。

脳からの発信だから、その者の趣味嗜好や経験、トラウマ等で造れる物が変わってくる。

トラウマが反映される者。
趣味嗜好が反映される者。
経験が反映される者。

『………あの子は趣味嗜好かな』

造り出す物でその人の人生が垣間見えるとも言われている。そうして独自の武器を血液で造り出すことをいつからかこう呼ぶ。

「血蝕解放………掴んだか」

『凄いね。私、あの子のこと気に入っちゃった』

地面を抉りとるほどの攻撃を避け、少年は体勢を整える。その直後、巨人の顔面めがけて特大の一発を打ち込んだ。

『ナイスショット』

もの凄い音を伴って身体が破裂した後、巨人はただの血だまりと化す。かろうじて意識を繋いでいた少女は耐えきれずに気絶した。

「す………すげぇ………」

そのあまりの威力に空がポツポツと泣き始める。少年自身も驚きを顕にし、呆然と地面に座り込んでいた。

『天候を変えるとは………やるねぇ』

「確かに威力は文句ない………が」

『コントロールは不十分だって言いたいんでしょ？磨けばすぐに光ると思うよ、あの子』

「否定はしない」

私と無人は未だ座り込んでいる少年を見る。

強大ゆえに破滅をもたらす鬼の血。使い方次第で、その力はあの子を簡単に殺すだろう。彼を生かすも殺すも、彼自身の力次第というわけだ。

もちろん、そんなことは私たちがさせない。正しい血の操り方をこれからしっかり教えてあげないとね。