天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ36)

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飛び散る血液を2つの刃物に変え、少年は巨人の元へと向かっていく。その光景を見た私は正直かなり驚いていた。

『………へぇ。やるね、あの子』

別々の形状物を同時に造り出すのはかなりの高等技術。隣にいる無人も、あの子の技量に感心したような表情を浮かべている。

さっきのあの自信は口先だけじゃなかったってことか。誰がどう見ても、あの子の器用さと経験は他の生徒たちと比べて頭一つ抜き出ている。

………育て甲斐のある子たちが多くて嬉しいよ。

『(だけど………)』

攻撃を上手く躱しながら、巨人相手に奮闘する少年。けれども、あと一歩のところで惜しくも阻まれる。首を狙った鋭い攻撃は結果的に巨人の左腕を切り取るだけだった。

「………まだまだだな」

『そうだね。あの子なりに頑張っているとは思うけど………』

少し厳しい目で少年を見下ろす私たち。

着眼点や発想はとても良いんだけどね………やっぱり、全然足りないかな。それと視野が狭すぎる。もっと広い目で俯瞰しないと。あの子と同じ、致命的だ。

あとは_____

『！』

いくつか改善点を頭に挙げつつ、視線を脇に外したとき、視界に飛び込んできた“それ”に私は目を見開いた。

『………掴めたみたいだね』

何かを閃いたような顔でじっと宙を見つめている少年。感触を確かめるように、拳を握ったり開いたりを繰り返している。

他の2人に触発されて大事なことにようやく気づけたようだ。コロコロと変わるその表情に私はさらに笑みを深める。

『………見せてごらん。君の力を』

彼なら、きっとできるはずだ。だって彼は_____の血を継ぐ者だから。