天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ35)

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『あーあ、派手にやってるね』

騒ぎがあった方に駆けつけると、血でできた大きな巨人が少年2人を容赦なく襲っていた。その巨人の足元には血を流して倒れる少女の姿。

………なるほどね。あの子が巨人(これ)を作ったのか。あの小さな身体でこの血の量は尋常じゃないけど………何か理由があるのかも。

鬼ごっこが終わったら、それぞれの能力も含めた生徒たちの詳しい情報を無人に聞くとしよう。

「屏風ケ浦の血蝕解放か………」

『助けなくていいの？このままだと失血死するよ、あの子』

「あいつらがどう切り抜けるか見たい。無理だと判断したら俺が行く」

『了解。だけど、そんなに長くは待てないからね』

私はチラッと少女を見る。

あの子たちは心も身体も発達途中だ。大人と比べると血の量が遥かに少ない。だから、大人の基準で考えたらダメなんだ。あの少女は例外みたいだけど、血が流れるのが速すぎる。

正直、いつ死んでもおかしくない。今すぐにでも応急処置をしたいところだけど………とりあえず、ここは無人の言う通りにしよう。

『………ふむ』

眼下に広がる光景を見て、私は冷静に状況を分析する。

今までの戦いで満身創痍な2人。無理もないか、あんな巨体相手じゃ。嫌々ながらも無意識に共闘してるみたいだけど、あの巨人には全く効いていない様子。

特に、あの子はまだ血を操れていない。派手な音を立てて右手を地面と擦り合わせているけど、審査のときのように血が変化せず、困惑した表情を浮かべている。

『(まあ、あれは“まぐれ”だったし………)』

無理やり血を出したからといって、必ず変化するとは限らない。審査の時は100回に1回の荒業が出たけど、そんな奇跡が何回も起こるわけじゃない。

あれは偶然できただけ。鬼の血について何も掴めていなければ、意のままに操ることはできないんだ。

ボッ!!

次々と繰り出される攻撃を避けられず、正面からもろに受けたあの子は悔しげに地面に膝をつく。

おそらく、自身の力のなさに打ちのめされている頃だろう。キラッと光る雫が地面に数滴落ちた。

「泣きてぇなら、どっか他所で泣け」

左手の手袋を外しながら、そう無慈悲に言い放つもう一人の少年。興味なさそうに見ていたその目が真っ直ぐ巨人へと向けられる。

少年は腕を上下に重ねた後、それぞれの親指を身体に残る継ぎ目に勢いよく突き刺した。