天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ33)

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「やっぱ君は優しいよ。強くしてあげてね………A君」

『はい』

「あの子たちを頼んだよ。それと………無理はしないように」

『………ありがとう、ございます』

努めて冷静に言葉を返し、それを聞いた校長は音もなく姿を消す。

震える声を悟られないよう意識しすぎたせいか、途中でほんの少し声が詰まってしまった。だけど、この程度なら多分バレていないはず。

「『………』」

残された私たちは一言も発することなく、物思いに沈んでいた。風に揺れる木々の音だけが絶えず私の耳に入ってくる。

………悔やんでいる時間なんてない。私が、あの子にそう言ったじゃないか。目の前のことにだけ集中しろ。

悩んでいる暇があるなら手を動かせ。落ち込んでいる暇があるなら、一つでも多くの命を救え。そのために、私はいるんだから。

『………ふぅ』

その場で深呼吸を繰り返すと徐々に気持ちが落ち着いてくる。私はパチンと頬を叩き、情けない自分に活を入れた。

ドオッ!!

そんなとき、森の方から凄まじい音が聞こえてきた。大地が大きく揺れ、木々のざわめきも激しさを増す。

急いで顔を上げると、突然の音に驚いた鳥たちが空へ羽ばたいていく姿が視界に写った。

直後、音のした方から白い煙がいくつも立ち上ぼる。明らかに何かが起こっているんだと私たちは瞬時に理解した。

『………よっと』

すぐさま木のてっぺんに登り、私は周囲に視線を走らせる。視界に飛び込んできた“それ”を見て、大体の状況は把握できた。

「何か見えたか？」

『うん。まったく、鬼ごっこなのに場所がバレるような真似をするなんて………』

状況確認を終え、地面に降り立った私に無人が声をかける。

「鬼ごっこ」は鬼から無事に逃げ延びるゲーム。制限時間まで生き残る必要があるのだから、極力見つからないように行動するのが鉄則中の鉄則だ。

それに、これは隠密行動にも通じている。相手の目を掻い潜り、自身の目的を遂行するためには重要な技術だ。これがいかに重要かは、幼いあの子たちでも容易に理解できるだろう。

それにも関わらず、目立つような行動をするなんて………『私はここです』って言ってるようなものだよ。後でちゃんと教えてあげないと。