天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ4)

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『うう、痛い………』

突如として与えられた容赦のない痛みに、私は小さな呻き声を漏らす。威力が威力なだけに痛みがなかなか消えず、ぶつぶつと文句を言いながら私は無人の隣を歩いていた。

ありったけの恨みを込めて視線を送るも、当の本人はどこ吹く風。それどころか、ちょっと機嫌が良さそうにも見える。

『ねえ、まだズキズキしてるんだけど。手加減って言葉知ってる？』

「手加減はしたぞ？自業自得だ。お前、もしかして弱くなったか？」

『え、なんか凄いムカつく。やり返していい？』

「やれるものならな」

無人が言葉を言い終えるよりも先にやり返そうと試みるも、寸前で腕を掴まれた。

何を思ったのかは知らないけど、無人はそのまま手に力を込めていく。それも、恐ろしいほどの馬鹿力で。

『ちょ、痛い痛い痛い！こっち負傷者なんだけど！』

「負傷者………？」

『目の前にいるでしょうが！見えてないなら眼科行く！？』

心底意外そうな顔をした後、ようやく私の腕が解放される。痛む手首を擦りながら、悔しいけどやり返すのは諦めることにした。

………何も言わずに荷物を持ってくれるところは優しいんだけどな。

「はあ………校長にはやるなよ、さっきの」

『いや、さすがにしないよ。誰彼構わずやってるわけじゃないしね』

「………そうか」

その後も軽い冗談を交えつつ、互いの近況を報告しながら、私たちは久しぶりの会話に花を咲かせる。

話したいことはたくさんあるけど、とりあえずは元気そうで安心した。まあ、無人に関しては余計な心配だったかもしれないけどね。

極力考えたくはないけど、万が一ってこともあるからさ………無事に再会できたことが本当に嬉しい。

『それにしても、驚かせようと思ってたんだけどな～。よくわかったね、私が来るってこと』

「校長から伝えられたからな。そのうち来るとは聞いたが………まさか、その日だとは思わなかった」

『え、嘘。今日聞いたの？本当に？』

「ああ」

『あー………ドンマイ』

校長からの電話は数日前にもらっていたから、明らかにこれは確信犯だろう。あの人らしいと言えばあの人らしいけどね。

校長との電話の後、羅刹学園(ここ)に向かう私の姿を無人は偶然見つけたそうだ。それで、わざわざ待っていてくれたらしい。

………やっぱり優しいね。