天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ27)

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_____神羅の森

場所は変わって、私たちは今、「神羅の森」に来ていた。ここは島の南に位置する森で学校から直線で12キロ弱の距離にある。

「侵入禁止」と書かれた看板と森を囲む巨大なフェンス。そして、それに絡まる大量の鎖が物々しい雰囲気を一層引き立てていた。

『………懐かしいな』

この森も足を踏み入れるのは久しぶりだね。学生時代、よくここで遊んだっけ………なんだか、遠い昔のことのように感じるよ。

「1時間以内に俺に捕まらず学校へ戻れ。今から俺は敵だ」

森の入口に集まった生徒たちに「鬼ごっこ」の説明をする無人。この時点では、まだ普通の「鬼ごっこ」だと感じるだろう。

だけど………

「1つルールがある。ゴールするにはこれが必要だ」

無人は懐から小さなボールを2個取り出し、森の方へと勢いよく投げる。相変わらず、肩の力がエグいこと。野球選手みたい。

「おー………飛ぶなー！！」

ただの「鬼ごっこ」だとつまらないから、私が無人に提案しておいたルールがこれだ。

“ボールを持っていないとゴールは無効になる”

この森はかなり広いし、ボールはとても小さいしで見つけるのはそう簡単じゃないけど………これくらいはまだまだ序の口だから。

もっと小さいボールも何個かあったけど、さすがに初めてでそれはかわいそうだからね。私なりの配慮だよ。合格祝い、みたいなものだと考えてくれれば嬉しいな。

『それじゃ、ルールを確認するね。

一、無人に捕まったらその場で拘束
ニ、全員拘束されたら終了
三、ボールがないとゴールができない
四、制限時間は1時間

………どう？理解できた？』

一本ずつ指を立てながら私は簡単にルールを説明する。概ね、全員理解できた様子だけど………やっぱり、あの子だけは違うみたい。

わかりやすく頭を抱えている様子を見るに、ルールを覚えられるか不安ってところかな？正直、難しいルールなんて一つもないんだけど………ボールのこと、絶対忘れないでね？

「つまり先生から逃げつつ、同級生とも競うってことですね！」

「そう。ちなみに言っとくが………ゴールできなかった奴は「即退学」だ」

そう言いながら、片方の人差し指だけで腕立て伏せを始める無人。何度も繰り返された「退学」という言葉に真っ先に食って掛かる生徒が1人。