天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ26)

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「ここに遊びに来た訳じゃないよな？」

音もなく2人の背後に回り、少年たちを椅子に座らせる無人。先ほどまで賑やかだった教室は水を打ったように静まり返った。

一瞬の出来事に少年たちはまだ理解が追い付いていない様子。まあ、それも無理ないか。

『君もだよ、ピアスのおチビちゃん』

「！？」

私の隣にいる少年は心底驚いた表情を見せた。一番後ろの席に座り、椅子から腰を上げて2人の喧嘩に加わろうとしていた少年。

そんな少年を席に着かせ、私は隣で頬杖をつく。無人同様、音もなく現れた私に周りの子たちも驚いてこちらを振り返った。

「どうした？そんな顔して。何か驚くことでもあったか？」

さも当然といった表情の無人と私を目にし、全員の顔が強張る。強い警戒を含んだ視線をひしひしと感じながら私は席を立った。

自分たちとの圧倒的な“差”を見せつけられた生徒たちの顔に緊張が走る様子を見つつ、私は教卓の方へと移動する。

「席替わる！コイツ嫌い！」

「そうか。仕方ない」

露骨に嫌そうな顔をする少年を見て無人は思うところがあったようだ。

「本来今日は学校説明と案内だが………別のことをやるか」

「何すんだ？」

黒板に背を預けていた私の前を通り過ぎ、無人は教卓の中央へと移動して両手をつく。

「お前ら鬼だろ？じゃあ「鬼ごっこ」に決まってるだろ」

『………ふっ』

真面目な顔をする無人の側で笑っちゃいけないと思いつつも、堪えきれなくなった私は小さく吹き出した。

あの無人がこんな面白い冗談を言うようになったなんてね………人って、どんな風に変わるのか本当に予測できないよ。

………あ、ちょ、足踏まないで。教卓で見えないからって、この子たちの前ですることじゃないぞ。痛い痛い痛い！

「え？遊ぶの？」

「話聞いてたか？これは遊びじゃない。早速、移動してもらうが………A」

顎でくいっと指し示され、無人は少し横に捌ける。この子たちの前で簡単に自己紹介をしろってことなんだろう。まったく、人使いが荒いんだから。

『………』

心の中で散々文句を言いつつ、私は教卓の中央へ移動する。緊張や不安、警戒………様々な表情を浮かべた生徒たちの顔を見渡した後、私は少しだけ微笑んだ。

『初めまして。私は峯雪A。今日から君たちの面倒を見る教師の一人だよ。よろしく頼むね？………未来あるおチビちゃんたち』