天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ23)

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_____教室前

「ここがお前の教室だ」

涼しげな顔でローラースケートを滑らせる無人。肩で息をする少年に向かって無人は短くそう告げた。

「はあ、はあ………お前ら………マジで………減速しねぇのな………」

『お疲れ様。頑張ったね』

10秒弱で教室前に着いた私たちに続き、目標の15秒ピッタリに辿り着いた少年。まだ羅刹学園(ここ)の構造がわからないのに、よくついてこれたもんだ。

私たちの背を見失わないよう、凄く必死だったはず。この子の運動神経は悪くなさそうだね。

「学校か………血がたぎるぜ………！」

『元気なのはいいけど喧嘩ばっかりしないでね？おチビちゃん、また退学になっちゃうよ』

「なんでそれ知ってんだ？？」

少年の不思議そうな顔に笑顔で返す私。そんなとき、無人の携帯から着信音が鳴った。

ピッと軽やかな音を立て、画面に表示された名前を見てから携帯を耳にあてる無人。相手の声が聞こえやすいよう、私は隣に移動して耳をそばだてた。

「なんですか？校長」

「無人君、合格者出したんでしょ？」

電話の向こうから聞こえてきた声は予想していた通りの声。のほほんとした声が微かに聞こえてくる。

「足で開けて一発カマすか？いや貫禄ある感じで登場する方が………」

「………」

側でぶつぶつと何かを考え込む少年に苛立ちを見せる無人。

どうやら、少年は教室への入り方で悩んでいるらしい。第一印象が重要なのは否定しないけど………普通の学校とは違うんだよな、ここ。

「さっさと入れ」

音もなく後ろに回った無人は少年の背を勢いよく蹴り飛ばす。飛ばされた衝撃で扉が外れ、大きな音を立てて少年と一緒に吹き飛んだ。

なんか、段々とこの子に対する態度が雑になってきてない？私の気のせいならいいんだけどさ………まさか、他の子にもやってないよね？大丈夫？

「それが何か？」

「だーって無人君さー、君ここ数年間合格者「0人」だったじゃん」

『！』

聞こえてきた「0人」という言葉に私は最初驚くも、どこか納得がいった。無人は自分に厳しいから、他の人に対しても常に厳しく判断している。

そう考えると今回の合格者は計7人。そりゃあ、校長が興味を示すわけだ。私でも、その数の多さにビックリしたんだから。

この教室の中に無人が認めるほどの子たちがいるってことか………ちょっとワクワクしてきたかも。