天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ21)

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『まあ、いいや。そういうことだから、よろしくね。正直、無人がいれば私は必要ないかも_____』

「いや、お前はここにいろ。必要だ」

『………調子良いこと言っちゃって』

ふいに溢した言葉を拾われ、思っていたよりもストレートな返答に少しこそばゆい気持ちになる。

視線を宙に彷徨わせた後、チラリと横目で無人を見るも、「何かおかしなことを言ったか？」っていう顔をされた。

………ほんと、敵わないね。

『そこまで言ってくれるなら、私なりに頑張ろうかな』

「………そういえば、A。お前_____」

「頭に何か生えてんだけど！？」

そのとき、無人の言葉を書き消すほどの声量が室内から響いてきた。頭に宿る鬼の証にようやく気づいたんだろう。無人は短くため息をつき、鬼のツノについて簡単に説明する。

「いいから早く着替えろ」

室内から「カッケェな」って呟きが聞こえてきたから、羅刹学園(うち)の制服を気に入ってくれた様子。声が少し弾んでいるところは年相応の男の子で少し微笑ましくなる。

あまり学校に通ってなかったみたいだしね。楽しい学校生活が送れることを祈ってるよ。

「お前の他にも合格者がいる。その中でレベル的にはお前が最下位だ。様子を見て使えないと判断したら退学だ」

「は！余裕だよ！」

なんとも厳しい言い方だけど無人の言っていることは正論なため、私は黙って2人のやり取りを聞いていた。

負けず嫌いな性格らしく、今の言葉にも思ったほどダメージは受けていないらしい。メンタルが強いのはある意味良いことだね。

「あ！そーいや親父どこやったんだよ！」

「お前の父親の遺体は遺体安置所に保管してる。お前の信仰する宗教を知らないから葬送は任せる」

ふと思い出したように更衣室から飛び出てきた少年。

私が後で聞こうと思っていたことを無人が先に聞いてくれた。確認を求めるように視線を寄越した無人に対し、私はコクりと頷く。

それでもまだ不安げな様子の少年に対して、付け加えるように私は口を開いた。

『安心して。君のお父様は私が責任を持って保管したから。鬼とか桃とか、気にしなくていいんだよ』

時間差で様々な思いが押し寄せてくるんだろう。黙り込む少年は何かを堪えるような面持ちでじっと床を見つめている。

本来なら、この島に桃を入れることは許されないけど………事前に校長に説明して許可は取ってあるし、その点は問題ない。