天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ20)

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_____更衣室前

審査は無事に終わり、後は真っ直ぐ教室に向かうだけ_____というわけにはいかず、私たちは今、更衣室へと向かっていた。

さすがに、ずっと半裸のままにさせとくわけにはいかないからね。合格したなら、それ相応の服を身に付けてもらわないと。

『はい、これおチビちゃんの制服。着替えておいで』

「おー、サンキュー！」

事前に用意していた制服を手渡し、少年を更衣室へと促す。

本土からここまでずっと裸足だったし、さっきの審査で血があちこちに付着しているから、身体を洗い流す必要もありそうだ。

『………聞いたよ、今回の件』

更衣室の中からシャワーの音が聞こえ、少年の気配が近くにないことを確認した後、私は隣にいる無人に声をかけた。

腕を組んだまま壁に寄り掛かり、無人はこちらを見ることなく、「そうか」とだけ答える。

『だから、通常の審査に加えて「収集」だったんだね。納得がいったよ』

私はチラッと更衣室の方に視線を送る。室内からはシャワーの音と一緒に、あの子の鼻唄が微かに聞こえてきた。話を聞かれている心配は今のところなさそうだ。

今回の審査が少し特殊だってことは事前に無人から聞いていたけど………なるほど、こういうことだったのか。

『最初から教えてくれれば良かったのに………あの子が“そうだ”って、いつ知ったの？』

「お前と別れた後、校長から聞いた。お前にはまだ言うなってこともな」

私と別れた後………ああ、羅刹学園(ここ)に着いて無人を待っていたときのことか。校長も人を試すようなことするね、まったく。

「それで、お前はどうするんだ？」

『んー、しばらくは羅刹学園(こっち)にいるよ。表向きは無人のサポート役としてね。まあ、でも_____って、話してる途中なんだけど？』

「ちゃんと聞いてる」

私が話していたにも関わらず、隣で逆さ片手懸垂のようなものを始めた無人。呆れ顔で隣を見るも止める気配は一向になさそうだ。

支えにしているその傘を勢い良く蹴り飛ばしてやろうかと思ったけど、その衝動をなんとかして堪える。

『はあ………』

手で顔を覆った後、私は一つため息をついた。

無人に変な憧れを抱いている人たちにも見せてやりたいよ、今の姿。合理主義も、とことん極めればある意味自己中だからね？

普通、人が話しているときにそんなことしないんだからさ………まったくもう。