天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ18)

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『私が誰かは後で話すよ、おチビちゃん』

「誰がチビだ！ぶっ殺すぞ！」

『殺すって言われてもね。私から見れば君はおチビちゃんだよ。私、君が暴走する前からここにいたんだけど？』

「！？」

私の言葉にわかりやすく顔に出した少年。「気づかなかった」っていう副音声がどこかから聞こえてくるくらいだ。

「っ………そんなもん、信じられっか！嘘だろ！」

『嘘じゃないよ。こんなつまんないことで嘘つくわけないじゃん。嘘ついて、何か私にメリットある？』

私の言葉にぐっと押し黙る少年。そんな様子を眺めながら私は彼の元へと近づく。

この部屋に入る扉は一つしかない。かなり大きな扉だから、動きがあればすぐに気づく。それに、無人が間に立っていたとはいえ、ほぼ少年の目の前から入ってきたんだから。

それでも気づけなかったってことは周りがちゃんと見えていない証拠。戦闘において、それは一番の命取りになる。

これくらいは気づいてもらわないと後々大変だからね。審査に無事合格したなら、この子も羅刹学園の一員。これも一種の訓練だよ。

『わかった？』

「クソ………」

どうやら観念したらしく、少年は悔しそうな声を出す。私は少年の前に膝をつき、小さな頭をそっと撫でた。

「ガキ扱いすんなよな………」

口ではそう言うものの、疲れ果てて抵抗する気力はないらしい。ぶつぶつと小声で文句を言いながら、されるがままになっている様子はちょっとかわいかった。

反抗期真っ盛りな年頃なんだろうけど、反応が素直で可愛いね。どっかの誰かさんとは大違いだ。

「手短に処分する」って無人が言い出したときはさすがに止めに入ろうと思っていたけど………無事に生き延びられたようで安心したよ。

もしそんなことになっていたら崩壊するだけじゃ済まないからね、この部屋。

『さて、もう少しお喋りしたいところだけど、そろそろ本気で怒られそうだからね。じゃあ、先生？説明を_____』

ガッ!!

「たいそうな自信だな。お前のその自信はどこから来るんだ？」

『………ゴメンナサイ』

説明の途中だったことを思い出し、話の流れを無人に返すも、かなりお怒りだった様子。振り返った瞬間に冷ややかな視線を向けられ、さらには頭を鷲掴みにされて心臓が止まるかと思った。

まったく、この握力お化けめ………

「何か言ったか？」

『何も言ってな_____ちょ、痛い痛い痛い！』