天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ17)

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「首の皮一枚だが合格だ」

床に倒れ伏す少年に向かって無人はそう告げた。

暴走化した少年と無人のおかげで、部屋は竜巻が起きたかのような大惨事。壁や床の至るところが窪んでおり、四方八方に血が飛び散っている。

「生徒って………」

困惑する少年を置いて、無人はボロボロのホワイトボードを持ってきた。

哀れにも被害を受けたホワイトボード(それ)は既に半分以上をも失われ、原型を留めていないと言っても過言じゃない。

そんなおかしな状況に少年がつっこまないわけがなく。

「効率的に説明するぞ」

「滑りたいだけだろ」

………ダメだ。もう我慢の限界。

『ふっ、ふふふ。あっははははは！』

「！？」

『あははははっ………あー、おかしい。久々にこんなに笑った気がする』

笑い声と共に突如現れた私に驚きを隠せない少年。無人は小さくため息をつき、傘を片手にこちらを見た。

『派手に暴れたね～。いつこっちに飛び火してくるかヒヤヒヤしたよ』

「嘘つくな。微塵も思ってないだろ」

『あ、バレた？つまんないの』

「配慮はしたんだ。当たるわけがない」

ふわりと微笑む私の後ろには異様に思えるほど傷一つない窓がある。周りの状況と比べると、その異常さがやけに際立っていた。

腰かけていた場所から降り立ち、私は無人たちの元へと足を進める。

確かに、私の方へ攻撃が向かってくることは一度もなかった。あの子が暴走化している間も無人が攻撃の的となっていたし、流れ弾も全て無人が処理してくれた。

だから私は、こうやって血を一滴も垂らさず、一歩も動くことなく平穏に観戦できていたというわけだ。

まあ、でも………

『片づけが大変そうだね。最小限の被害で抑えるかなって思ってたんだけど………ちょっと楽しくなったんでしょ』

「………」

側に来て無人の顔を覗き込んだ途端、ふいっと視線をそらされる。図星だな～、これは。

無人は本当にわかりやすいよね。沈黙は肯定と捉えるけど、いいのかな？

『さてと………待たせて悪かったね。合格おめでとう。今の気持ちは？』

「っ、アンタ誰だ！いつからいたんだよ！」

『ふふふ、元気だね。嫌いじゃないよ、そういうの』

あまりにも衝撃的だったのか、口を開けてポカンとしていた少年。そんな彼に話を振った途端、ハッとした様子で喋り始めた。