天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ16)

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「あぁ！？」

部屋の隅に置いてあったホワイトボードの内容をボーッと眺めていた私は少年の声を聞き、再びそちらに視線を戻す。

死にたがりにピッタリの「やり方」があるそうで、無人は自身のネクタイに手を掛けた。そのまま器用にシュルシュルとほどいていく。

一方、私はそんな2人の様子をただ黙って眺めているだけだったから、段々とこの状況に飽きていた。何か面白いことがあれば多少は変わるのにな。

『！』

キョロキョロと部屋を見渡していたとき、ふと私の元に天啓が降りてきた。“面白いことがないのなら自分で作ればいい”………なーんだ、簡単じゃん。

「お前………ネクタイ似合わなそうだな」

『きゃー、無人君、カッコいいー』

絶対に気づかれないと思い、暇を持て余した私が小さな声で茶々を入れた途端、無人がもの凄い勢いで睨んできた。

実際、表情は全く変わってないんだけど私にはわかる。あれは絶対怒ってるな。だって、人ひとり簡単に射殺せそうなくらいなんだよ？

………そこまで睨まなくてもいいじゃん。ごめんて。暇だったんだよ。

「何言って_____」

少年の言葉が続くことはなく、一瞬で背後に回った無人は少年の首を本気で絞め始めた。

椅子に縛られ、抵抗する術もない少年。徐々に息が苦しくなったのか、足をバタバタと必死に動かしている。

少年の目から大量の血の涙が流れ落ち、辺りは一気に濃い匂いに包まれた。

『あーあ………勝手なことしちゃって』

突如として始まった過激な審査。窓枠に寄り掛かりながら、私はその光景を静かに眺めていた。

正直、あの子も普通の審査だけだと思っていたから、こうなったのは少し予想外。今後の展開次第では不合格になる可能性もありそうだ。

だけど………

『少しやりすぎかも？』

無人的には効率の良い審査方法なんだろうけど………見ているだけの私としては段々と少年がかわいそうになってくる。

あの子についてまだよく知らないけど、今までこんなに命の危険にさらされることはなかったはず。

さすがに殺したりはしないと思うけどさ、もうちょっと良いやり方とかあるのにね。変なトラウマとか植え付けないでよ？

『さて………あの子はどう切り抜けるのかな？』

無人が首を絞め始めてから、かなりの時間が経った。何かが起こるとすれば、それは今だろう。少年の一挙一動に注意しつつ、私は目の前の光景を黙って眺めていた。