天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ15)

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「_____！_____！」

目的地が近づくにつれ、誰かの叫ぶ声が徐々に聞こえてくる。元気の良い、男の子の声だ。

見た感じ、良くも悪くも感情的になりやすそうな子だったから、きっとこの声もあの子の声(もの)なんだろう。

『叫ぶだけの元気はあるってことか………良かった良かった』

目が覚めたとき、自分が全く知らない場所にいたら驚かない方がおかしい。それに、今日はあの子の身にたくさんのことが降りかかったんだ。今頃、困惑してるだろうね。

………まあ、無人があの子の神経を逆撫でするようなことを言ってる可能性も、なくはないけど。わりと言葉足らずなとこがあるからな。

『よし、到着っと』

そんなことを考えている内に私は目的地へと辿り着いた。なにやら、言い争う声が部屋の中から聞こえてくる。

まったく、穏やかじゃないな………少し落ち着いていこうよ。喧嘩しに来たわけじゃないんだからさ。

『お邪魔しまーす』

誰にも聞こえないくらいの小さな声で私はこっそりと扉を開ける。だだっ広い部屋の中、無人の後ろ姿が真っ先に視界に入った。

気配を消しながら壁に沿って歩き、部屋のほぼ中央にある大きな窓の前で私は足を止める。ちょうど、無人と少年の真横に位置する場所だ。

「………」

横目で一瞬私の方を見た無人にひらっと手を振って応える。私はそのまま窓枠に腰かけ、2人の様子をじっと観察していた。

少年の方は頭に血が上っているのか、目の前の無人しか眼中にないらしい。私の存在には全く気がついていない様子。

「人に点数つけんな！ムカつくんだよ！」

「健忘症か？審査すると言ったろ？」

………まあ、それもそれで好都合か。私はいち観客として審査を楽しませてもらうことにしよう。

それにしても、かなりガッチリと拘束したんだね、無人は。効率よく相手を縛っているところはさすがって感じだけどさ。

懸念事項があるとすれば、過度に身体が圧迫されてないかってとこだけど………

『んー………いや、余計なお世話か』

きっと、これくらいはまだ序の口の方だろう。縄じゃなくてベルトで拘束しているのを見るに、少しはあの子に配慮しているのかな？

それと、拘束って言っても手の自由を奪っただけだから、まだ優しい方だよね。視覚や聴覚、それに嗅覚を塞いだわけじゃないんだしさ。