天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ14)

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聞き間違えなんじゃないかと思うほどの耳を疑う言葉に思わず素っ頓狂な声が出た。

2人揃って首を傾げているこの状況は周りから見れば非常に怪しいんだけど、そんなことを気にしている余裕は今の私にはない。

………この人、今、なんて言った？兼任？誰が？私が？嘘でしょ？

『け、兼任、ですか………ちなみに、何を？』

「え？羅刹学園(ここ)のだけど」

『いや、話は通してあるって言いませんでした？』

「うん。兼任の話ね」

膝から崩れ落ちそうになるのをなんとか耐え、私はふらっと壁に手をつく。目眩がするような感覚に加え、呆れてものも言えない。

ムチャ振りする人だってわかってはいたけど………さすがに、この状況は想定外だぞ。

『普通に考えて無理ですよ！』

「大丈夫だよ。できるできる。今までと大して変わらないんだし」

『いや、それは否定しないですけど………それとこれとは話が違うっていうか！そもそも_____』

「まあ、そんなことだから、よろしくねー」

『あ、ちょ！』

居づらくなったのか、面倒くさくなったのか、はたまた、なんの意味もないのかは知らないけど、校長は忽然と姿を消した。

私の制止も虚しく、行き場を失った手が空を掴む。怒りを抑えきれず、私は拳をギュッと強く握りしめた。

『ああ、もう！』

行き場の無い感情を落ち着かせるため、何度か深呼吸を繰り返す。沸々と沸き上がる怒りに私は無理やり蓋をした。

………過ぎてしまったことは仕方ない。引き受けたからにはもう後戻りもできない。

絶対、絶対、絶っ対わざと言わなかったんだろうけど、これ以上怒っても当の本人にぶつけることはできない。自分が無駄に疲れるだけだ。悲しいことにね。

『………腹括るしかないな』

幸い、羅刹学園(ここ)には無人もいる。おそらく、なんとかなるだろう。しばらくは一緒にいることだし、多分助けてくれるはず。

どうしても無理なときは無理だと言いに行こう。うん、そうしよう。我慢はよくないしね。

『はあ………それじゃ、仕事に戻りますか』

半ば無理やり気持ちの整理をつけ、私は再び足を動かす。あの子の審査をするとなると………きっとあの部屋だろうな。

必要なことを頭に思い浮かべつつ、無人と少年がいるであろう場所へと私は向かった。