天才時々天災【桃源暗鬼】 (ページ12)

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_____羅刹学園

『それじゃ、お父様の方は私に任せて。終わったら私もそっちに行くね』

誰の目にも触れることなく、無事にあの場から抜け出した私たちは今、羅刹学園へと戻ってきていた。

あれほどの騒ぎが起これば当然桃の警戒も強くなる。桃との余計な戦闘はなるべく避けたいからね。本土での審査続行は不可能と判断し、早々に船に乗り込んだというわけだ。

『葬儀のことは審査後に聞くとして………この後のスケジュールはどうするの？遅らせる？』

「いや、予定通りだ。まだ少し余裕がある」

『ふーん。了解』

軽く事務連絡を交わしながら羅刹学園の廊下を歩く。

さっき無人から聞いたけど、今は他のクラスも教員も実習でいないらしい。だから、こんなにも人気がないわけだ。

私が羅刹学園(ここ)に呼ばれたことも、それと何か関係しているのかな。というか、私は本当に何をすればいいんだろう。

………まあ、いっか。気長に待つとしよう。

『合格者が7人か～。楽しくなりそうだね』

「こいつが、か？俺の中では不合格の可能性が高いけどな」

『ふふ、大丈夫だよ。きっとその子は合格する。そんな気がするんだ』

「………どうだか」

この子の合否に関して難色を示す無人。審査項目はまだいくつか残っているから、正直私もどう転ぶかわからない。

だけど、不思議と不合格の気がしないんだよね。なんだかんだ言って、無人は合格にすると思うんだ。

これはあくまでも私の勘だけどさ。もしかしたら、「弟子にしてくれ！」なんて言われるかもしれないね。面白いから無人には黙っておこうっと。

………まあ、私が口に出さずとも、伝わっているとは思うけどね。

『じゃあ、また後で』

分かれ道に差し掛かり、それぞれの目的地へと向かうため、私と無人は一旦別れた。もうすっかり体温を失ったお父様を抱えながら、遺体安置所の前で足を止める。

『………失礼します』

誰もいない場所に向かってそう呟き、私は室内へと足を踏み入れた。靴音が響く静寂の中、お父様を静かに横たえる。

私は再度手を合わせ、短い祈りを捧げた。この人の抱いていた理想が、いつか現実になることを切に願いながら。

『………ふぅ』

閉じていた目を開いた後、私は無言で手を前に差し出す。鋭い音と共に指が切れ、滴る赤い血が変化する様子をじっと見つめていた。